今週の一枚
溝がある原始惑星系円盤

すばる望遠鏡による戦略的惑星・円盤探査プロジェクトSEEDSの一環で観測された、PDS 70星に付随する原始惑星系円盤の近赤外線画像です。中心に明るい恒星があり、円盤を際立たせるためにマスク処理をしています。原始惑星系円盤は惑星が生まれる現場で、PDS 70星は年齢が1000万年以下の若い天体です。マスクの周囲の暗い色は、赤外線の強度が弱くなっていることを意味しており、円盤に溝構造があることを示唆しています。惑星がまさに誕生し、円盤内の物質を弾き飛ばした結果なのかもしれません。
惑星の姿を求めて
PDS 70星の溝構造が発表されたのは2012年でした。当初、複数の惑星が溝構造を作ったものだと考えており、その惑星が発見される日は遠くないと思っていました。なぜなら、溝の幅はおよそ70天文単位と巨大で、観測しやすいと考えていたからです(海王星の軌道半径が30天文単位なので、とても大きな溝と言えるでしょう)。すばる望遠鏡の観測では、残念ながら惑星は発見できず、木星くらいの質量よりも軽い惑星があるはずだという上限値が得られたのみでした。あれから5年が経ち、世界でも観測装置の性能が格段に上がりましたが、未だにPDS 70星に惑星が発見されたという報告はありません。いつになったら惑星が発見されるのでしょうか?すばる望遠鏡においても惑星探査のための新装置(SCExAO/CHARIS)が稼働し始めています。それらを使って、世界に先駆けて惑星を発見したいものです。
文:橋本淳(自然科学研究機構 アストロバイオロジーセンター)
画像データ
天体 | PDS 70 |
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望遠鏡 | すばる望遠鏡 |
観測装置 | HiCIAO |
波長 | 近赤外線 1.6マイクロメートル |
クレジット | 国立天文台 |