今週の一枚

土星リングの力学(II. プロペラ構造)

今週、20年の運用を終えて土星に突入し、ミッションを終了する土星探査機カッシーニ。この探査機は多くの不思議な土星の姿をとらえてきました。その一つに、土星リングの「プロペラ構造」があります。土星のリングは、数センチメートルから数メートルの大きさをもつ無数の氷粒子で形成されています。その中に埋もれた直径約数100メートル程度の小さな衛星の重力がこのプロペラ構造のもとになっていると考えられています。この映像は、重力多体問題専用計算機GRAPE(GRAvity PipE、グレープ)が計算したプロペラ構造ができる様子を可視化したものです。

氷粒子が描き出す世界

プロペラ構造の他にも、映像からは土星リングの氷粒子が描き出す特徴的な構造が見えます。映像前半では、無数の氷粒子が水面のさざ波のような模様を描き出している様子を見て取ることができます。これは「ウェイク構造」と呼ばれるもので、氷粒子が自らの重力で集まろうとする効果と、土星の周囲を回る速度が位置によって異なるために粒子の塊が引き伸ばされようとする効果によって生まれる構造です(参照:土星リングの力学(I. wake 構造))。

プロペラ構造の正体

映像の後半では、プロペラ構造の近くに迫ります。土星リングに埋もれた小さな衛星の重力によって、周囲の氷粒子が衛星に引き寄せられ、その表面に降り積もります。表面に降り積もらない氷も、衛星の重力によって動きが乱されます。その影響で衛星の前後に伸びるしずく型の穴ができるのです。このようにしてプロペラ構造が作られると考えられています。観測されているプロペラ構造の典型的な大きさは、数100メートルから数キロメートルになります。

画像・映像データ

使用計算機GRAPE-DR
現象の時間スケール数日
現象の空間スケール約10キロメートル
計算を行った研究者道越秀吾、小久保英一郎
クレジット道越秀吾、小久保英一郎、武田隆顕、国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

※この映像をご利用の際には、4D2Uプロジェクトページ「ご利用上の注意」をご覧ください。

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