自然科学研究機構 国立天文台

秋色三鷹を乱れ染む

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秋色三鷹を乱れ染む

秋が次第に深まると、木々に囲まれた国立天文台三鷹キャンパスは鮮やかな彩りに染められていきます。晴天の一日、写真に収められたのは「子午儀資料館」。かつて恒星の精密な位置測定を行っていた施設です。この建物に保存されているレプソルド子午儀は、日本で初めての本格的観測星表の立役者となった装置で、国の重要指定文化財に指定されています。天文学史の貴重な足跡を守り続ける建物が、穏やかな古色を浮かべて涼やかな季節に佇んでいます。

日本の近代天文学黎明を支えた子午儀

現在国立天文台三鷹の子午儀資料館に格納されているレプソルド子午儀は、1880年ドイツ製の観測装置です。子午儀とは、子午線(南北を結ぶ線)上のみに向けることができる望遠鏡で、天体の通過を精密に観測することで時刻の決定や経度測量に使用されました。日本の天文学の黎明期を支えたこの子午儀は旧東京天文台の時代には港区麻布に設置されており、その地点は今でも日本の経緯度の原点です。

三鷹へ移ってからは現在の子午儀室に据え付けられ、数多くの天体の位置決定に使用されました。その成果は1949年に日本で初めての本格的観測星表である「三鷹黄道帯星表」、1962年に「三鷹赤道帯星表」として出版されました。

現在はその他の歴史的子午儀を共に保存・展示する「子午儀資料館」として一般に公開されています。柱頭を模した装飾や入口のひさしに施されたセセッション式の直線模様が使われており、20世紀初頭のモダン建築の流行を偲ぶことができます。

文:内藤誠一郎(天文情報センター)