質問3-8
どうして2月だけ28日しかなくて、日数が変わるの?
最初に結論を書きますと、2月だけ28日しかないのも、うるう年に日数が変わるのも、どちらも古代ローマで使われていた暦において、現在の2月にあたる月が1年の終わりの月だったためです。
現在私達が使っている暦は、古代ローマの暦が元になっています。
紀元前8世紀頃のローマで使われていたとされる「ロムルス暦 」では、月は10しかなく、農業をしない冬の期間には月日が割り振られていませんでした。いまの3月から12月にあたる月は、ロムルス暦の時代から存在していますが、いまの1月と2月にあたる月は、当時はまだありませんでした。
古代ローマの王、ヌマ・ポンピリウスが制定したとされる「ヌマ暦 」では、それまで使われていた10の月にIanuarius(英語のJanuary)とFebruarius(英語のFebruary)を追加しました。当時のFebruariusは現在のような「2番目の月」ではなく、一年の最後の月とされていました。
また、ヌマ暦では、それぞれの月の日数は29日か31日でした。これは、古代ローマでは偶数は不吉とされたことなどからだと考えられています。しかし年末のFebruariusは例外で、28日しかありませんでした。Februariusは祓いや清めの月であるため、不吉な数でも良いとされていたようです。
ヌマ暦では、1年の日数は355日しかありませんでした。そのままでは季節と日付がずれていってしまうため、およそ2年に1度「うるう月」を入れていました。うるう月の調整の際には、年末のFebruariusを23日か24日とし、その翌日から、27日間のうるう月を挿入していました。
しかし、政治的・経済的な混乱や戦争のためか、うるう月が正しく挿入されなかったことにより、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)の時代には、暦が季節に比べて2ヶ月以上も進んでしまっていました。カエサルは暦を改革し、平年を365日、4年に一度のうるう年を366日とする「ユリウス暦 」を制定し、紀元前45年から使い始めました。ユリウス暦では年の始めはIanuariusと定められ、Februariusは「2番目の月」になりました。
また、ヌマ暦で日数が29日だった月は、ユリウス暦では日数が30日か31日に変更になりました。しかし、Februariusは日数を増やされず、ヌマ暦と同じ28日のままになりました。これは、Februariusには宗教的な意味合いの強い祭礼が多くあったため、混乱を避けるために日数の変更を避けたためと考えられています。こうして、それぞれの月の日数が現在と同じになりました。
ローマでの月の名前 | 月の英語名 | ロムルス暦での日数 | ヌマ暦での日数 | ユリウス暦での日数 |
---|---|---|---|---|
Ianuarius | January | なし | 29日 | 31日* |
Februarius | February | なし | 28日 | 28日(29日) |
Martius | March | 31日* | 31日* | 31日 |
Aprilis | April | 30日 | 29日 | 30日 |
Maius | May | 31日 | 31日 | 31日 |
Junius | June | 30日 | 29日 | 30日 |
Quintilis(Iurius) | July | 31日 | 31日 | 31日 |
Sextilis(Augustus) | August | 30日 | 29日 | 31日 |
September | September | 30日 | 29日 | 30日 |
October | October | 31日 | 31日 | 31日 |
November | November | 30日 | 29日 | 30日 |
December | December | 30日 | 29日 | 31日 |
1年の日数 | 304日 +冬の期間 |
355日 (うるう月で 調整) |
365日(366日) |
ユリウス暦では、4年に一度うるう年を入れて1年の長さを調整します。1年の始まりの月はIanuariusですが、Februariusが「年末」という意識は根強く残っており、カエサルはヌマ暦と同様に、Februariusをうるう年の日数の調整に使うようにしました。このため現在でも、2月の日数を変えることで、うるう年の日数の調整をおこなっているのです。
ただし当時は、祭礼の日付変更を避けるために、2月24日を2回繰り返していました。その後、うるう年には2月28日の後に29日を置くというやり方に変わり、現在に至っています。
注:昔の暦については正確にわかっていない部分もあり、まだどの説が正しいとは言い切れませんが、現在有力だと考えられている説を紹介しています。