質問3-7

1月1日はどうやって決まったの?

現在私たちが使っている暦は「グレゴリオ暦」と言いますが、1月1日が決まった経緯を知るためには、その元となっている古代ローマの暦について知る必要があります。

紀元前8世紀頃のローマで使われていたとされる「ロムルス暦 」では、月は10しかなく、農業をしない冬の期間には月日が割り振られていなかったと伝えられています。当時の1年の始まりの月はMartius(英語のMarch、現在の3月)だったようです。

その後、ローマ王ヌマ・ポンピリウスが新たに制定したとされる「ヌマ暦 」では 、冬の期間にもIanuarius(英語のJanuary、現在の1月)とFebruarius(英語のFebruary、現在の2月)という2つの月が追加され、1年は12か月になりました。ヌマ・ポンピリウスが年の始めをMartiusからIanuariusにしたとも伝えられていますが、はっきりしません。ただ、紀元前1世紀頃までには、年の始めはIanuariusになっていたと考えられます。

ヌマ暦では、1年の日数が355日しかありませんでした。そのため、うるう月を入れることで、季節と暦がずれないように調整をしていました。しかし、責任者の怠慢や意図的な操作でうるう月が正しく挿入されなかったことにより、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)の時代には、暦が季節に比べて2ヶ月以上も進んでしまっていました。カエサルは、「今後このような混乱が起こらないように」と暦を改革し、平年を365日、4年に一度のうるう年を366日とする「ユリウス暦 」を制定し、紀元前45年から導入しました。

カエサルの死後、紀元前44年には、カエサルの功績をたたえ、Quintilisがカエサルの名前を取ってIulius(英語のJuly、現在の7月)に改称されました。さらに紀元前8年には、皇帝アウグストゥスの功績をたたえ、Sextilisが、アウグストゥスの名前を取ってAugustus(英語のAugust、現在の8月)に改称されました。こうして、現在まで使われている、月の名前ができあがりました。

西暦325年には「ニケア宗教会議」が行われ、「春分の日」が3月21日に決められました。この「春分の日」は宗教上のもので、天文学で決められる「春分」とは異なり、日付は固定されていました。その後、長い月日が経つにつれて暦と季節がまた合わなくなり、16世紀には、天文学で決まる「春分」は、現在の3月11日頃にまでずれていました。
そこで、「ニケア宗教会議」での決定を尊重し春分の日が3月21日頃になるよう、1582年にローマ法王グレゴリウス13世によって、ユリウス暦から「グレゴリオ暦」への改暦が行われました。この改暦では、ユリウス暦の1582年10月4日の翌日をグレゴリオ暦の1582年10月15日として、春分の日を調整しました。また、うるう年の入れ方も、ユリウス暦での4年に一度から、暦の1年の長さが実際の1年の長さにより近くなるよう、400年に97回という入れ方に変わりました。

グレゴリオ暦は、世界各国に徐々に受け入れられていきました。日本では、明治の初めまでは別の暦を使っていましたが、明治5年12月2日の翌日を明治6年1月1日(グレゴリオ暦の1873年1月1日)として、グレゴリオ暦が導入されました。日本においては、このときから、現在の1月1日が1年の最初の日になったのです。

結局、1月1日というのは、古代ローマ時代の暦の上で、名前もついていなかった冬の期間の前半がIanuariusと呼ばれるようになり、それがいろいろな変更を経ながらも現在まで続いてきたという、長い歴史的経緯で決まったものです。天文学上の理由があって「1月1日をこの日とする」と決めたものではありません。

表1 それぞれの時代における月ごとの日数と年の始め
(*印は年の始め)
ローマでの月の名前 月の英語名 ロムルス暦での日数 ヌマ暦での日数 ユリウス暦での日数
Ianuarius January なし 29日* 31日*
Februarius February なし 28日 28日(29日)
Martius March 31日* 31日* 31日
Aprilis April 30日 29日 30日
Maius May 31日 31日 31日
Junius June 30日 29日 30日
Quintilis(Iurius) July 31日 31日 31日
Sextilis(Augustus) August 30日 29日 31日
September September 30日 29日 30日
October October 31日 31日 31日
November November 30日 29日 30日
December December 30日 29日 31日
1年の日数 304日
+冬の期間
355日
(うるう月で
調整)
365日(4年ごとのうるう年は366日)

注:昔の暦、特にロムルス暦やヌマ暦については、当時のことを記す文献にも様々な記述があり、どの説が正しいか、はっきりとはわかっていません。

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