パンスターズ彗星

目次

パンスターズ彗星について

パンスターズ彗星(C/2011 L4 (PANSTARRS) )は、2011年6月6日(世界時)に、米国ハワイ州・マウイ島のハレアカラに設置されたパンスターズ1 望遠鏡による観測で発見されました。発見時は、さそり座方向にあり明るさは19.4等で、恒星とは異なる形状で観測されましたが、その後、ハワイ島マウナケアにあるカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)をはじめとする他の望遠鏡による確認観測の結果、彗星の特徴であるコマと尾があらためて確認されました。発見時のパンスターズ彗星までの距離は約6.9天文単位、木星の軌道よりも遠い位置でした。(IAUC No.9215, 2011 June 8 より)

パンスターズ彗星の特徴

パンスターズ彗星の軌道(動画 1分37秒)

パンスターズ彗星は、太陽に最も近づく頃には肉眼で確認できる程度の明るさになるのではと期待されています。一般的に、彗星がどの程度明るくなるか、コマや尾がどのような見え方になるかの予測はたいへん難しく(参照:彗星の姿)、そのため、明るさの予測値には計算者によるばらつきが出る場合が多くあります。

2011年6月の発見以降2012年12月までに世界各地で観測された明るさをもとに予測したパンスターズ彗星の最大光度は、明るく見積もってマイナス1等級台、おそらくは0等級程度ではないかとされています(2013年1月10日現在)。しかし、今後さらにこの予測値が変わる可能性があります。(パンスターズ彗星の明るさ

彗星はぼんやりと拡散して見えるため、同じ等級の恒星や惑星よりも暗く感じられます。また、薄明(日の入り後や日の出前の空が明るい状態) の中では、背景の空の明るさにかき消されてさらに暗く感じられるので、予測値と見かけの明るさの違いに注意が必要です。

パンスターズ彗星の位置(惑星の位置は2013年3月10日)
パンスターズ彗星の位置(惑星の位置は2013年3月10日) 大きなサイズ / 最大サイズ

パンスターズ彗星が太陽に最も近づく(近日点通過)のは、2013年3月10日(日本時間)、そのときの太陽からの距離(近日点距離)は約0.30天文単位(4500万キロメートル)、地球からの距離は約1.11天文単位(1億6600万キロメートル)です。

パンスターズ彗星の軌道は、惑星の重力の影響により現在は放物線となっており、太陽に近づくのは今回一度きりで、二度と戻ってこない彗星だと考えられています(参照:彗星の軌道)。

パンスターズ彗星の明るさ(2013年2月18日追記)

2013年1月以降、南半球の各地では未明の空にパンスターズ彗星が姿を現し、アマチュア天体観測家をはじめ多くの人々が、明るさを増し尾が現れ始めたパンスターズ彗星の観測を行っています。ただ、2月に入り太陽からの距離が1天文単位を切ったにも関わらず、当初の予測ほど明るくなっていないようです。そのため、パンスターズ彗星の実際の最大光度はせいぜい3等級程度になることも考えられ、肉眼での確認が難しい可能性があります。

過去の彗星にも、明るくなると予想されながら実際にそうならなかったもの、逆に、明るくならないと予想されながら明るい大彗星になったものもあります。彗星の明るさの予測は難しく、パンスターズ彗星が実際にどの程度の明るさになるかは、太陽に近付いてみないと分からないと言えるでしょう。

パンスターズ彗星の明るさについては、吉田誠一氏のウェブサイトの今週の明るい彗星(2013年1月5日:北半球版)IAU Minor Planet Center Elements and Ephemeris for C/2011 L4 (PANSTARRS) (英語)を参考にしました。

どのように見えるのか

パンスターズ彗星は、2013年1月上旬時点で、さそり座方向に見えていて、南半球では明け方の東の空で観測されています。

日本でパンスターズ彗星が観察しやすくなるのは、3月10日の近日点通過以降となるでしょう。この頃から、日の入り後の西の空に見られるようになります。3月下旬から4月上旬は、日の入り後の西の空、日の出前の東の空と、1日に2回見ることができるようになります。ただし、いずれにしても太陽から見かけ上あまり大きく離れることがないため、きわめて低空でしか見ることができず、観察条件はよいとは言えません。

4月5日には、アンドロメダ座のM31(アンドロメダ銀河)に近づき、双眼鏡で同じ視野に入ります。ただし、夕方、明け方のいずれの場合も薄明中であるため、彗星、M31ともに確認が難しいかもしれません。

4月後半以降は、カシオペヤ座の中で一晩中沈むことがない周極星となりますが、近日点通過直後の頃のような明るさは期待できないでしょう。

このように、夕方、明け方ともに低空での観察となりますから、建物や樹木などの邪魔がない低空まで空が開けた場所をあらかじめ見つけておきましょう。また、方位磁石などを使って見える方角を事前に確認しておくことも必要です。その日の日の入り・日の出の時刻と方角は、暦計算室ウェブサイトの「今日のこよみ」で確認することができます。また、各地でのパンスターズ彗星の位置は、暦計算室ウェブサイトの「今日のほしぞら」で調べることができます。

春霞や黄砂の影響で、低空まで見渡せる条件が限られる季節ではありますが、ぜひ春の空にパンスターズ彗星を探してみましょう。

パンスターズ彗星の位置(夕方)3月中旬~4月上旬  日の入り後30分
パンスターズ彗星の位置(夕方)3月中旬~4月上旬 日の入り後30分 大きなサイズ / 最大サイズ
パンスターズ彗星の位置(明け方)3月下旬~5月 日の出前30分
パンスターズ彗星の位置(明け方)3月下旬~5月 日の出前30分 大きなサイズ / 最大サイズ
パンスターズ彗星の動き
パンスターズ彗星の動き 大きなサイズ / 最大サイズ

パンスターズ彗星の写真

国立天文台が各地で撮影したパンスターズ彗星の画像をまとめました。

キャンペーン

国立天文台も参加している日本天文協議会では、この明るくなると期待され注目を集めているパンスターズ彗星を実際に多くの方に見ていただくために、彗星観察キャンペーンを行う予定です。

キャンペーンについての詳しい情報は、キャンペーンサイトをご覧ください。

参考情報

パンスターズ計画について

パンスターズ彗星は、ハワイ大学の「パンスターズ1 望遠鏡(Pan-STARRS 1 telescope)」によって発見されました。

ハワイ大学天文学研究所は、現在、小惑星や彗星などの地球接近天体を監視するための「パンスターズ(Pan-STARRS; The Panoramic Survey Telescope & Rapid Response System)計画」を進めています。この地球接近天体の監視観測のため、マウイ島のハレアカラに広視野全天サーベイ用の望遠鏡を設置し、2010年よりプロトタイプ(試作)望遠鏡による観測を開始しています。これが、パンスターズ1 望遠鏡(口径1.8メートル)です。

パンスターズ1 望遠鏡には、満月の40倍もの広範囲を撮影できる世界最大のデジタルカメラが搭載されています。この計画は、観測開始から3年以内に10万個の小惑星を観測し、地球接近の可能性がある天体の軌道を決定することを目的としています。

パンスターズ彗星は、2010年5月に観測を開始したパンスターズ1望遠鏡が発見した2個目の新天体です。

パンスターズ計画についてはハワイ大学ウェブサイト(英語)を参照してください。

期待が高まるアイソン彗星

今年2013年に、肉眼で見えるほど明るくなると期待されている彗星がもう一つあります。11月29日に太陽に最も近づく(近日点通過)アイソン彗星(C/2012 S1(ISON))です。このアイソン彗星は、近日点距離が約0.012天文単位(180万キロメートル)と太陽に大接近するため、急激に明るくなると考えられています。近日点通過の頃は太陽に近すぎるため地球からの観察は難しいものの、その前後には明るくなった彗星の姿を肉眼で捉えることができるのではと、大きな期待が寄せられています。

詳しくは、アイソン彗星についての解説ページをご覧ください。

彗星についての一般的な解説

彗星についての一般的な解説ページでは、彗星とはどのような天体なのか、どこからやってくるのか、名前をつけるルールなどをわかりやすく解説しています。

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