子午儀資料館
レプソルド子午儀によって観測が行われていた建物で、1925年に建てられました。
天頂を通り真北(子の方角)と真南(午の方角)を結んだ線をさす子午線上を通過する天体の位置を精密に観測する望遠鏡が子午儀や子午環です。そのため、これらの望遠鏡は子午線面内(南北方向)でのみ正確に回転する仕組みになっています。
格納されているレプソルド子午儀(大子午儀)は、1880年ドイツ製で、天文台が麻布にあった頃は、時刻の決定と経度測量に使用されました。子午儀があった地点は天文経度の原点の1つとなっています。
天文台が三鷹へ移ってからは、子午儀はこの子午儀室に据え付けられ、月、惑星、主要な小惑星の赤経の決定に使用されました。1937年以降は主に恒星の赤経観測に使用され、1949年に日本で初めての本格的観測星表である「三鷹黄道帯星表」が出版されました。1962年には「三鷹赤道帯星表」も出版されましたが、赤道帯の恒星の観測終了とともに格納されてその活動を終えました。
柱の頭部や入口のひさし部分に、当時流行していたセセッションの直線模様が使われており、建物にアクセントを与えています。
現在では、貴重な子午儀をたくさん展示した子午儀資料館になっています。
レプソルド子午儀
レプソルド子午儀は、1880年(明治13年)ドイツのA. REPSOLD & SÖHNE社で製作され1881年(明治14年)に当時の価格15,200マルクで明治政府の海軍省海軍観象台が購入した近代天文学黎明期の有効口径135ミリメートル、焦点距離2120ミリメートルの本格的な観測装置です。当時、海軍観象台は麻布飯倉の地にあり、1888年(明治21年)に東京大学天象台、海軍観象台、内務省地理局の3者が統合され東京大学東京天文台(当時は帝国大学東京天文台)が発足した際、海軍観象台があった地に置かれ、レプソルド子午儀は東京天文台に移管されました。
子午儀は天体が子午線上を通過する時刻を精密に観測することによって、その地の経度を決定する、あるいは時刻を決める観測に使われるものです。レプソルド子午儀は、麻布時代は主に時刻の決定に使用され、この子午儀の観測によって求められた時刻によって旧江戸城天守閣の跡地で正午の号砲が撃たれていた歴史的な観測装置です。東京天文台が置かれた麻布飯倉の地は狭隘であり、その上市街地であったため空が明るくなり観測に適さなくなっていました。
そのため、東京天文台は空が暗く広い敷地が確保できる北多摩郡三鷹村への移転計画を進めていましたが、1904年(明治37年)から1905年(明治38年)には日露戦争があり、この戦争に勝利したものの、莫大な戦費のため日本の国情は疲弊を極めており移転のための用地が入手できたのは1909年(明治42年)のことであり、移転費用の調達は思うように進みませんでした。
東京天文台の三鷹村への移転は1914年(大正3年)頃から開始されましたが、移転作業が遅々としていた1923年9月1日、関東大震災により、麻布飯倉の東京天文台は壊滅的な被害を受けましたが、幸いなことにこのレプソルド子午儀は震災の被害をまぬがれました。この震災を契機に東京天文台の三鷹村への移転は一気に進み、レプソルド子午儀も1925年に完成したレプソルド子午儀室に移されました。
三鷹に移ってからは1935年(昭和10年)より、月、大惑星、主要小惑星の赤経の決定に使用され、その後はもっぱら相対観測による恒星の赤経決定に使用されました。1937年(昭和12年)から1943年(昭和18年)にわたり黄道帯星(2790星)の赤経が決定されて我が国初の本格的な星表である「三鷹黄道帯星表」(1949年)が完成し、1950年(昭和25年)より1959年(昭和34年)にわたり赤道帯星(4135星)の赤経も決定され「三鷹赤道帯星表」(1962年)を出版しました。この赤道帯の恒星観測を完了し、レプソルド子午儀は役目を終えました。
レプソルド子午儀は、130年以上の歴史をもった基本的な天文観測装置として日本の天文学史上貴重な望遠鏡です。
概要
口径 | 13.5センチメートル |
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焦点距離 | 212センチメートル |
観測対象 | 天体の精密な位置観測 |
備考 | 国の重要文化財 |
サイズ | 高さ5メートル |
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備考 | 国の登録有形文化財 |
1925年 (大正14年) | 建設 |
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1949年 (昭和24年) | 「三鷹黄道帯星表」が完成 |
1950年 (昭和25年) | 「天頂星表」を出版 |
1962年 (昭和37年) | 「三鷹赤道帯星表」を出版、研究観測終了 |
2008年 (平成20年) | 子午儀資料館として一般公開 |
2011年6月 (平成23年) | レプソルド子午儀、国の重要文化財になる |
2014年4月 (平成26年) | レプソルド子午儀室、国の登録有形文化財になる |
2024年3月 (令和6年) | レプソルド子午儀及びレプソルド子午儀室、日本天文遺産に認定 |