ゲームの好きな少年は、やがてデジタル映像の世界へ

天文シミュレーションプロジェクト 専⾨研究職員

中山弘敬

Hirotaka Nakayama

高校生からの夢だったゲーム制作会社に就職

もともとゲームの会社に入りたかったんですよ。子供のころ、不燃ごみ置き場で拾ったゲーム機を自分で直して使った、それが最初のゲーム機です(笑)。高校のときにファイナルファンタジーVIIが発売されて、このゲームを制作している会社に入りたいと。大学受験先もそれを考慮して選んで、工学部の情報画像工学科に入りました。でも大学を卒業しただけだと、就職のときにアピールするもの、ポートフォリオのようなものがないので、それで大学院に進んでさらに勉強を。それから念願の株式会社スクウェア・エニックスに入りました。

入社後はリアルタイムのCGデザイナーをやっていました。仕事は楽しかったです。結果的に今の仕事につながっているので、やって良かったのですが……。3年ぐらいたつと、ひたすらゲームの背景の樽とか木とか作っている自分に疑問が生じて。もっとアカデミックな環境に移りたいとも感じたり。仕事をしながらもう一度大学院で勉強を始めて、そのときの教授から国立天文台で募集があることを教えていただいて、それで転職しました。

4D2Uに転属。2015年にシアターのリニューアルを

国立天文台に入ったのは2008年で、最初は科学文化形成ユニット(注1)に。宇宙の観測データを映像化する人材を育てる期間限定のプロジェクトだったのですが、採用の応募をするときはあまり仕事内容をわかっていなくて。いざ仕事を始めたらめっちゃ大変でした。教える側のまとめ役というか、助手的な役割だったんですけど、途中から授業を1つ受け持つことになったり。卒業制作のときは天文台に泊まり込みでやっていました。それが1年目で、翌年には今の4D2U(4次元デジタル宇宙プロジェクト)に異動しました。

4D2Uはアットホームな雰囲気で、映像を作ることに専念できるし「こっちの方が性に合っているな」と(笑)。研究者が計算した天文シミュレーションデータを元に可視化映像を作ることが主な仕事で、プレスリリース用の画像・映像、それから科学館や学校、エンターテインメントの場で活用される映像なども制作しています。2015年に4D2Uドームシアターのリニューアルが行われたのですが、そこでは高解像度化や立体視の方式変更などに携わりました。

(注1)平成19年度から文部科学省科学技術振興調整費<地域再生人材創出拠点の形成>に採択され、実施された「宇宙映像利用による科学文化形成ユニット」のこと。国立天文台が所有する4次元デジタル宇宙映像やすばる望遠鏡の画像等の研究資源を他研究分野や映像文化において、次世代映像として活用する人材の養成を目的として平成23年まで実施された。

“レベルアップ!”を味わう、学び続ける面白さ

僕が着任した当時、4D2Uではまだ平面もしくはドームマスター版の映像のみを制作していたのですが、その後、僕がVR版の提案をして、4D2Uとして制作を始めることになりました。またこれまで数々のVR映像を作りましたが、中でも「天の川銀河紀行」は先進映像協会のルミエール・ジャパン・アワード2017年度VR部門でグランプリ(注2)を、先進映像協会米国本部のルミエール・アワード2018では最優秀VR科学体験賞(BEST VR SCIENCE EXPERIENCE)(注3)を受賞しました。

この仕事の難しい点は、とにかくデータ量が多すぎるところです。ハードディスクがあってもあっても足りなくて、環境を作るところから自分でやらないといけない。それと映像を必ず立体視のドーム版にしないといけないのもきついですね。でも先例がないところで、自分で考えてがんばって打ち込んで「あっ、できた!」というときは快感。やり方を考えて自分で描画するツールを作ってできたときは、ひとつスキルが上がったという気がします。学ぶことはこれからもずっと続く、そこが僕は面白いと思います。

(注2)4D2U映像がルミエール・ジャパン・アワード 2017年度VR部門グランプリを獲得(2017年12月26日)

(注3)4D2U映像がルミエール・アワード2018 最優秀VR科学体験賞を受賞(2018年3月22日)

“面白い”を追加して、子供たちにもどんどん使ってほしい

ここのプロジェクトは指示待ちタイプでは厳しいかもしれません。僕も「次にやれることを考えろ」と1年ぐらい前に言われて、今、4次元デジタル宇宙ビューワーMitaka(注4)のWEBアプリケーション版を作っています。今まではダウンロード版でWindowsだけでしか使えなかったのですが、それをWEBアプリにしてOSを問わずスマートフォンなどのデバイスでも使えるようにします。僕のうちには7歳と3歳の子供がいて、ちょうど小学校ではGIGAスクール構想が進んでいて、1人1台、パソコンが行き渡るようにすると。そこで使えるようにしたいと思ってやり始めたんです。ある程度までできたら次に地上モードを作って、着陸したらこの三鷹のキャンパスを歩けるようにしようかなと。建物をクリックすると中を見られるようにしたり、たぶん子供は面白くないと使ってくれないので。それから4D2Uドームシアターをクリックすると、YouTubeですでに公開している映像が見られるようにリンクさせるとか。多くの人に楽しんでもらえる仕組みを、これからもいろいろと作り出していきたいです。

(注4)4次元デジタル宇宙ビューワー Mitaka

取材日:2026年1月19日/公開日:2026年3月2日
取材・文:臼田雅美/写真:長山省吾
掲載内容は取材時のもの

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