
様々な国の人と会い、ときに小さな幸せのおすそ分けも
国際連携室 サポートデスク
研究支援員
白土玲子
Reiko Shirato
「この仕事ができるのは、私しかいないんじゃない?」
サポートデスクは、三鷹キャンパスに勤務する外国人研究者や学生さんが、日本で充実した研究生活を送るための支援を行っています。行政手続きや住宅探しに始まり、生活する上での様々なこと、お子さんの教育の相談など、いろいろとあります。
私は以前、アメリカの大学の東京在勤職員で、日本の協定大学に交換留学している学生のサポートをしていました。その後、離職しましたが、ちょうど娘が小学校に入るタイミングで復職を考えていたら、国立天文台のサポートデスクの募集をみつけまして。武蔵野市、三鷹市辺りの土地勘もありますし、週3日勤務という条件も私の都合に合っていて、もう「この仕事ができるのは、私しかいないんじゃない?」という強気な気持ちで(笑)。それから8年以上になりますが、自分が行ったことのない国の方々と会えるというのは、なかなかできないことですよね。自分の経験が生かせることもあり、とても楽しく仕事をしています。

苦労を抱えている外国人研究員の方々が、実は一番の理解者
これまで30か国以上の方々がサポートデスクにいらっしゃっていますけれど、最初から苦労される方は多いです。役所で転入手続きをするにしても、手書きで申請書などを書かなきゃいけない。以前、市役所で手続きをしていたとき、同行した外国の方に「日本はデジタル化と言うことを考えなかったの?」と(笑)。銀行口座ひとつ開くにしても、「日本語が話せる人を連れてきて」と言われてしまったり。クレジットカードに関しては、日本語の規約を読めないなどの理由で、日本ではほぼ作れないですし。ほかにも私たちの目には見えない苦労が多々あって、サポートデスクは全力で、できるだけ支援をするんですけれど、結果的にできないこともあります。そんなとき、一番の理解者は外国人研究員の方々で、サポートデスクスタッフが抱えるジレンマも理解してくれる。「そうか、しょうがないね」と。とても理解があると感じています。
相談ごとは“プロポーズ大作戦”?
今、国立天文台にいらっしゃる外国の方は70人弱ぐらいで、サポートデスクを利用されるのはその中の一部。まめに立ち寄って世間話して帰る方とかも、全然ウェルカムです。日頃からお話ししていると、相談に来られたときに状況をつかみやすいですし。皆さんにサポートデスクを上手に使って欲しいですね。
以前、“プロポーズ大作戦”のご相談なんかもありましたよ。「白土さん、僕プロポーズするんだ」という話から始まって。指輪をデザインされたとか、「今度、井の頭公園でプロポーズするんだけど『結婚してください』は日本語がいい?英語がいい?」とか。「ここにカメラを持った友達がかくれている」など、綿密なプランニングをされていて。こういうところは、やっぱり研究者だなぁと。もちろん見事、project completedされました。その後アメリカで結婚されて幸せに暮らしています。こういったちょっとした幸せのおすそ分けがあったりするのも、このサポートデスクならではでしょうか。


自国に帰るときは、とにかく健康であるように
私が着任して2か月とたたないころ、サポートデスクに足しげく 通ってくださる研究者がいて……。そのうち「白土さん、実は今度手術をするんだ」、「付き添って欲しい」と話されて。手術の当日、ご家族と一緒に待合室で待っていたことがありました。医療通訳は専門領域なので、私たちは足を踏み入れないことにしているのですが、でも役に立ちたいと思って、今、医療通訳の資格を取得して勉強を続けています。近隣の英語が話せる病院の先生のリストも、これまでの情報を集めてかなり充実してきました。
国立天文台に来られる外国人研究員の方々は、家族と離れて日本に来られていたり、私たちが考えるよりもつらいことはたくさんあると思うのです。なんか寂しそうだなぁという時は、声をかけたり、「どうしてる?」とメールを送ってみたり。カウンセリングまではできなくても、「心配しているよ」、「ここにいるよ」というメッセージを発するぐらいはできるかなと。皆さん、いずれ自国に戻られたりするので、とにかく“日本から出るときは健康であるように”と、強く願っています。

取材日:2023年12月5日/公開日:2024年2月5日
取材・文:臼田雅美/写真:長山省吾
掲載内容は取材時のもの