宇宙図について
宇宙図のねらい

このポスターの狙いは、宇宙に対して興味を深める機会を多くの方に提供すると同時に、宇宙の新しい楽しみ方を広く提案することです。人間と宇宙の関わりや、身の回りにあふれる物質の起源、宇宙の歴史やその構造など、どなたでも一度は気になる宇宙の謎について、最新の天文学が到達した成果をしっかり盛り込むことにしました。一読すると難解に見えますが、ぜひ、じっくりと時間をかけて読んでみてください。
宇宙図の制作について

「一家に1枚 宇宙図」は、文部科学省が科学技術週間に制作・配布している一家に1枚ポスターシリーズの第3作として、2007年に初版が発行になりました。その後の5年間に解明された新しい知見に基づき、2007年版よりもさらに見やすく工夫して改定されたポスターが、本サイトで紹介している「一家に1枚 宇宙図2013」です。

「一家に1枚 宇宙図 2013」

監修:文部科学省、日本天文学会 天文教材委員会

著作・販売:(公財)科学技術広報財団

企画:国立天文台天文学普及プロジェクト「天プラ」

制作:「一家に1枚 宇宙図」制作委員会
縣秀彦、小阪淳、高梨直紘、平松正顕、亀谷和久、塚田健、川越至桜、成田憲保、内藤誠一郎、日下部展彦、高田裕行、石川直美、杉山直、市来淨與、山岡均 ほか

アートディレクション:小阪淳

コピーディレクション:片桐暁

協力:観山正見、佐藤勝彦、駒宮幸男、青木和光、三浦均、額谷宙彦、杵島正洋、石崎昌春、東京大学国際高等研究所 カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)、村山斉、Kevin Bundy ほか

参考文献:"Nine-Year Wilkinson Microwave Anisotropy Probe (WMAP) Observations: Cosmological Parameter Results", arXiv:1212.5226

画像提供:国立天文台・ハワイ観測所すばる望遠鏡、三鷹キャンパス50cm望遠鏡、石垣島天文台105cm望遠鏡/TMT観測所公社/国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト(4D2U)/小久保英一郎/長島雅裕/矢作日出樹/小泉周/吉田直紀/ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/Andrew Fruchter/Anglo-Australian Observatory/AURA/David Malin Images/Adam Riess (STScI, Baltimore, MD)/Caltech/Canada-France-Hawaii Telescope/Coelum/CNES/CXC/the ERO team/ESA/ESO/HEIC/INAF/JPL/J.William Schopf,University of California,Los Angeles/Malin Space Science Systems/NASA/NOAA/Palomar Observatory Sky atlas - National Geographic Society/S.Andreon et al Optical: DSS; ESO/SAO/SOHO/Space Science Institute/STScI/The Hubble Heritage Team/PDB ID:1DNN Trifonov,E.N.,Sussman,J.L.,Smooth bending of DNA in chromatin.In:"Molecular Mechanisms of Biological Recognition"(Ed. M. Balaban),Elsevier/North Holland Biomed.Press,1979,pp.227-232/VLT/WMAP Science Team

「一家に1枚 宇宙図」Web制作委員会
夏苅聡美、内藤誠一郎、小阪淳、高梨直紘、平松正顕、川越至桜、成田憲保

協力:玉置陽一、小林秀明

自然科学研究機構 国立天文台 天文情報センター

宇宙図の頒布について

宇宙図は、公益財団法人科学技術広報財団より有料頒布されています。
http://www.pcost.or.jp/

宇宙図のメインビジュアルについて

この宇宙図のメインビジュアルである「すり鉢形」や「しずく形」は、曲率ゼロを仮定したルメートルモデルに基づいて計算されています。すり鉢形は、宇宙の晴れ上がり時点(開闢後、約37万年後)をスタート時点とし、宇宙背景マイクロ波放射として観測されている領域がどのように膨張していったのかを表現しています。一方で、しずく形は「私たちに今見える宇宙」にある天体が、光を放った時点で私たちからどれくらい離れた位置にあったのかを表現しています。これらの形を再現するには、共動距離(comoving distance)と固有距離(proper distance)という、ふたつの距離の概念を理解する必要があります。

共動距離は、空間上に固定された任意の2点間の距離を、空間の伸縮と比例して伸縮する(共動する)物差しで測った距離になります。物差し自体が空間と共に伸縮するので、この物差しで距離を測れば、両者の距離は常に一定になります。

一方、固有距離は、空間上に固定された任意の2点間の距離を、空間の伸縮と関係なく一定のサイズを保つ物差しで測った距離になります。私たちが日常的に用いている“距離”の概念と同じものと言えます。物差し自体は空間の伸縮と関係なく一定のサイズを保つので、この物差しで距離を測れば、両者の距離は空間が膨張すれば大きくなりますし、逆に、空間が縮小すれば距離は小さくなります。

共動距離は、ある赤方偏移に観測される天体が、現在、どれくらい離れた距離にあるかを基準にして定義されています。宇宙図においては、すり鉢形の上面(現在)における、横軸方向の大きさに相当しています。

曲率をゼロとすれば、ある赤方偏移z の天体までの共動距離DC(z)は、

と書けます。ここでcは光速度、H0はハッブル定数、DHはハッブル距離、ΩMは密度パラメータ、ΩΛは宇宙項を表しています。

これに対して、任意の時点において、その天体がどれくらい離れた距離にあったかを示しているのが、固有距離です。曲率をゼロとすれば、赤方偏移zに対応する時代での共動距離の天体までの固有距離DP(z)は、

と書けます。この定義から、現在(z=0)での固有距離は、共動距離と等しくなります。

すり鉢形は、宇宙背景マイクロ波放射を放った領域(z=1090)までの各時代における固有距離を繋いだものです。一方、しずく形は、任意の赤方偏移にある天体が光を放った時点における固有距離を、z=0からz=1090まで繋いだものです。以上の計算に基づき、メインビジュアルは描画されています。

各パラメータについては、観測機Planckの最新の成果に基づいた数値を使用しています。具体的には、次の通りです。

H0 67.15 (km/s/Mpc)
ΩM 0.317
ΩΛ 0.683
出典:
"Planck 2013 results. XVI. Cosmological parameters", arXiv:1303.5076,
Table 5 の [Planck+WP+high-l] を利用。

参考文献・書籍等:
(日本語)須藤靖(2005年)、一般相対論入門、日本評論社
(英語)Phillip James Edwin Peebles (1993), Principles of Physical Cosmology, pp 310-321, Princeton University Press

宇宙図ウェブサイトでは、2013年3月に公表された観測機Planckによる最新の観測成果に基づいています。そのため、観測機WMAPの観測成果に基づいて作成された宇宙図2013の数字とは、一部異なるものがあります。