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シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星

彗星とは | SW3彗星の謎とは | SW3彗星はどこに見える? | 必要な機材は? | 見え方 | その他のコツ | 観望会・イベント情報 | 関連リンク

「謎の彗星見えるかな?」キャンペーン

報告の受付は終了しました。ご協力ありがとうございました。
 集計の結果は集計結果ページでご覧いただけます。

5月12日に、シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星が地球に最接近します。その前後の期間には、肉眼でも見えるかもしれないと期待されています。

そこで国立天文台では、ゴールデンウィークにあわせて、「謎の彗星見えるかな?」キャンペーンをおこなうことにしました。2006年5月2日の夜から5月8日の朝までの6晩に、肉眼や双眼鏡などでシュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星を観察し、このキャンペーンページから報告していただく、というものです。

これまでのキャンペーンと同じように、日本のどこで彗星が見えたかが、集計結果からわかるしくみです。携帯電話からでも参加できますので、今まで彗星を見たことがないという方もぜひチャレンジしてみてください。

彗星は、とても淡く観察するのが難しいですので、彗星の位置やどうやって見るかをしっかりと理解し、できればキャンペーン期間前に練習をしておくとよいでしょう。また、「見えなかった」という報告も貴重な観察結果です。見えなかった場合もぜひ報告をお願いします。


携帯電話用のキャンペーンページへは、 http://www.nao.ac.jp/i/ からアクセスしてください。

彗星とは

淡く見える彗星

彗星の模式図

いわゆるほうき星とも呼ばれる彗星は、夜空に長い尾を引いた姿が印象的です。そして、綿雲のようにぼうっと淡く見えるのも特徴です。

最近、肉眼または双眼鏡で見えるくらい明るくなった彗星としては、2005年1月に地球に近づいたマックホルツ彗星(C/2004 Q2)、2006年1月に発見されたポイマンスキー彗星(C/2006 A1)などがあります。

なぜ、ぼうっと淡く見えるのか? それは、彗星の構造に秘密があります。彗星は、汚れた雪玉とも言われ、たくさんの塵を含んだ氷の塊だと考えられています。彗星が太陽に近づくと、氷が溶け出し、彗星の核から塵やガスが吹き出し核の周りを覆って「コマ」を形成します。私たちはそのコマを見ているので、ぼうっとした姿として見えるのです。コマに覆われた彗星本体の「核」を直接見ることはなかなかできませんが、1986年、彗星探査機ジオットがハレー彗星のコマの内部にまで入り、初めて核の姿を撮影しました。ハレー彗星の核は、まるでじゃがいものようにでこぼことした、いびつな小惑星のような姿でした。

彗星のもう1つの特徴である「尾」には2種類あります。目で明るく見える尾は、核から吹き出した塵でできた尾で、太陽と逆方向に伸び、彗星の軌道にそって少しカーブします。塵の尾は白っぽく見え、吹き出した塵の量が多いほど、また尾が伸びている方向と地球との位置関係がよいほど、長く伸びた尾をみることができます。この尾の他に、写真などで青っぽい尾が見られることもあります。これは核から吹き出したガスでできた尾で、太陽風になびいて太陽とは逆の方向にまっすぐ伸びます。(図をクリックすると大きな画像を見ることができます。)

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彗星はどこから来るのか?

オールトの雲、エッジワース・カイパーベルトの想像図彗星は、とても小さくて淡いので地球に近づいたときに発見されますが、実はとても遠いところからやってくるのです。地球に近づいたことのある彗星の軌道を逆にたどっていくと、もともと彗星がいた場所がわかります。1つは、「オールトの雲」と呼ばれる、太陽系を包むように広がる半径1万から10万天文単位(※)の球殻状の領域です。実際に観測されたことはありませんが、いろいろな方向からやってくる周期が長い彗星の巣だと考えられています。

一方、惑星の軌道面とほぼ同じ方向からやってくる周期の短い彗星の巣として考えられているのは、エッジワース・カイパーベルト天体の領域です。実際に、海王星よりも遠いところで、エッジワース・カイパーベルト天体はたくさん見つかっています。

このように太陽系の果ての冷たいところからやってくる彗星は、太陽系形成時の物質をそのまま保存した化石のようなものだと考えられています。そのため、太陽系誕生の謎を解き明かしてくれる鍵として期待されています。

※1天文単位とは、太陽−地球間の距離のことで、約1億5千万キロメートル。

シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星の謎とは

シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星(73P/Schwassmann-Wachmann)は、1930年に、ドイツのシュヴァスマンさんとヴァハマンさんによって発見された小さめの彗星です。

5.4年の周期で太陽を一回りする短周期彗星で、ゆがんだ軌道のため、遠いときは木星の軌道付近まで離れますが、近いときは地球軌道の少し内側にまでやってきます。そのため、タイミングによっては、彗星が太陽に近づく頃に、地球にも大接近します。1930年の発見時にも、地球に0.06天文単位にまで近づいていました。ただし、タイミングが合わないと、小さい彗星ですので、なかなか見えません。そのため、1979年に再発見されるまで、なんと半世紀にわたって、行方不明となっていた謎の彗星なのです。

他にも謎があります。1995年に太陽に近づいたときには急激に明るさが上昇し、その後、彗星の核が3つに分裂しているのが観測されたのです。汚れた雪玉とも言われる彗星は、太陽の熱で融け蒸発していく間に、核が分裂してしまうことがよくあります。なかには、2000年のリニア彗星のように、ばらばらにくだけた破片がすべて蒸発してなくなってしまうものもあります。

シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星(以下、SW3彗星)の場合、2000年に太陽に近づいたときには、3つに分裂した核のうち2つが戻ってきたのが確認され、新しい破片も発見されました。そして、今年の3月には、新たに4つの核が発見されました。さらに、4月に入ってからは、破片の数は数十個にもなっていることが確認されました。どんどん分裂を繰り返しているようで、もしかすると、今回も皆さんが眺めている最中に、また分裂していくかもしれません。分裂が起きると、急に明るくなることもありますので、注目したいところです。

ただし、ほとんどの破片はとても小さいので、いちばん明るい「C核」と呼ばれる核を観察してみましょう。


注) この彗星の名前について:
この彗星の正式名称は 73P/Schwassmann-Wachmannです。発見者がドイツ人であることから、ここでは「シュヴァスマン・ヴァハマン」と表記しています。英語圏では、「シュワスマン・ワハマン」と発音されることも多く、そのような表記も長い間使われてきています。

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シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星はどこに見える?

シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星の位置

※図中に描かれている恒星は5等星くらいまでです。

※彗星の位置は、C核の位置を表しています。

シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星は、5月12日、地球に0.08天文単位にまで近づきます。予想通りに明るくなっていけば、5等から4等級くらいになり、空が暗いところならば肉眼でも見えるかもしれない、と期待されています。しかし、13日が満月のため、ちょうどこの頃は月明かりがあり、彗星のようなぼうっとした天体は見えにくくなります。できれば、ゴールデンウィーク頃の、月明かりのないときに眺めてみるとよいでしょう。

5月上旬は、夜8時には、SW3彗星は東北東の空で見えています。そして、そのまま夜が明けるまで一晩中見えています。午前3時頃には真西の方向、高さ80度ほどのところにあります。

SW3彗星の位置を星図に示しました。図は5月上旬0時頃、東の空の高いところにあるヘルクレス座付近の様子を表したものです。彗星の位置は、2006年5月1日から5月8日までの、それぞれの日の0時における位置です。違う時刻に見ると、少し移動しているはずです。(図をクリックすると大きな画像をみることができます。)

SW3彗星は、毎日少しずつヘルクレス座の中を移動して、キャンペーン期間の終わりには、こと座の1等星ベガに近づきます。もし、ヘルクレス座がすぐに見つからないようでしたら、うしかい座の1等星アークトゥルスとベガの間あたりを双眼鏡で探してみましょう。空が暗いところならば、肉眼でも見えるかもしれません。うしかい座のアークトゥルスなどがどこに見えるのかは、下図「5月上旬0時頃の東京の星空」をご覧ください。なお、近くには球状星団M13があります。小口径の双眼鏡や望遠鏡では、M13もぼうっとした姿で見えますので、星図で位置をよく確認して、見間違わないように気をつけましょう。


5月上旬0時頃の東京の星空
5月上旬0時頃の東京の星空

シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星の写真

(画像をクリックすると拡大します)

SW3彗星の拡大画像

2006年4月4日 02時08分と13分のコンポジット
青葉区愛子東6丁目地内、15cm反射望遠鏡直焦点(F6)で撮影 f=900mm
カメラ;キャノン イオスキッス デジタルN
露出;ISO800でそれぞれ5分間
提供・著作権者:仙台市天文台

SW3彗星

2006年2月23日撮影
うしかい座にあるときのSW3彗星。この時の明るさはまだ13.5等程度。
尾が右のほうへ伸びているのがわかります。彗星の動きにあわせてカメラを動かしているので、周りの恒星が線状に伸びて写っています。
35cmF10+ST2K(2x2)で90秒露光を15枚撮影。
画像はNo.1,2,3,4,5,6,7,8,11,12,13,15の12枚を加算
提供・著作権者:津村光則

SW3彗星

石垣島天文台の「むりかぶし」望遠鏡(口径105cmの光学赤外線望遠鏡)でも撮影に成功しました。
撮影:石垣島天文台

シュヴァスマン・ヴァハマン第3彗星(B核)のバースト現象

石垣島天文台で撮影されたシュバスマン・ヴァハマン第3彗星(B核)のバースト現象
撮影:石垣島天文台

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必要な器材は?

肉眼で

天の川が見えるような星のよく見える場所でなら、器材をなにも使わずに、肉眼で彗星を見ることができるかもしれません。星座を形作る星(恒星)とは違って、小さな雲のようにぼーっと広がった感じに見えるはずです。大きな都市やその周辺では、肉眼で見るのは難しいかもしれません。

双眼鏡で

肉眼で見えないときでも、双眼鏡を使えば彗星を見ることができるかもしれません。ただ、あまり倍率の高い(15倍以上の)双眼鏡や、口径(レンズの直径)の小さな(3cm以下の)双眼鏡は彗星を見るのに適していません。倍率の高い双眼鏡を使うと、見える範囲が狭いために彗星を視野に入れづらいですし、彗星の見え方も暗くなってしまいます。同様に小さな双眼鏡では、彗星があまり明るく見えません。

また、できるだけ、双眼鏡を三脚などに固定して彗星を見るようにしてください。双眼鏡を手で持っていると、どうしても揺れてしまい、あまりよく見えません。

とはいえ、最初からあきらめてしまうのではなく、お持ちの双眼鏡で是非チャレンジしてみてください。器材の能力が不十分なところを、繰り返し観察して慣れることでカバーできることもあります。

望遠鏡で

口径6cm程度の小望遠鏡でも彗星を見ることができるはずです。

倍率はせいぜい20〜30倍程度と、あまり倍率を高くしないようにしましょう。双眼鏡と同じように、倍率を高くすると、見える範囲が狭いために彗星を視野に入れづらいですし、彗星の見え方も暗くなってしまいます。

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見え方

コマが、小さな雲のようにぼーっと広がった感じに見えるはずです。中央には恒星状の強い集光が見えるかもしれません。

SW3彗星の場合尾はそれほど明るくありませんので、肉眼では見えないかもしれません。双眼鏡や望遠鏡でなら尾が見えるかもしれませんので、注意を向けてみてください。

このページの最後にある「関連リンク」で紹介しているページでは、ベテラン天体写真家が撮影した尾をたなびかせたSW3彗星の写真が見られます。 しかし、人間の目はカメラのように光を蓄積することができませんので、残念ながら、(双眼鏡や望遠鏡を使っても)写真のように明るくは見えないことに注意してください。「空に写真と同じような明るい彗星があり、見上げるとあっという間に見つかる」とは考えないほうがよいでしょう。

その他のコツ

見る場所

日本全国、どこでも見ることができます。(日本以外の国でも見ることができます。)

できるだけ大都市から離れ、近くに街灯など人工の明かりがない場所を選びましょう。

SW3彗星は、大都市や街灯の明かりに比べてとても弱い光しか出していません。人工の明かりの影響があると、それに邪魔されて、彗星がとても見えづらくなります。

見る時刻と時期

日が沈んで暗くなる夜8時には、SW3彗星はすでに空に見えています。一晩中観察できますが、午前3時を過ぎると、空がだんだん明るくなってきますので、淡い彗星は見えなくなります。

また、キャンペーン期間中でなくても、2006年の4月末から5月いっぱいは、双眼鏡で見えるくらいの明るさだと思いますので、キャンペーン期間前に彗星を探してみたり、キャンペーン期間が終わっても、移動していく彗星を観察し続けるのも面白いでしょう。

目を慣らす

明るい場所から暗い場所に出て、10分以上は暗さに目を慣らしましょう。SW3彗星の光はたいへん淡いですので、暗さに十分目を慣らさないと、見るのがなかなか難しいと思われます。双眼鏡や望遠鏡を使う場合でも、やはり目が暗さになれているほうが暗い部分まで見えますので、より楽しめるでしょう。

SW3彗星のように淡い天体の場合、彗星のある位置をまっすぐに見つめるより、目を少しそらし気味にしたほうがよく見えることがあります。視野の中心には、色の判別が得意ですが暗い光の苦手な細胞があり、視野の周辺には、色の判別は苦手ですが暗い光の得意な細胞があるためです。まっすぐに見つめずに注意だけを向けるというのは、慣れないとなかなか難しいのですが、やっているうちに慣れてくると思います。

寒さ対策も

5月とはいえ、夜は冷え込むことがあります。特に、夜に何十分も屋外でじっとしていると、だんだん体が冷えてきます。普段よりも厚着をしたり、カイロなどを用意しておくのもよいかもしれません。

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観望会・イベント情報

いただいた情報を元に、観望会やイベントの情報を掲載しています。それぞれの詳細については各施設にお問い合わせ下さるようお願いいたします。

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関連リンク

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