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マックホルツ彗星

「マックホルツ彗星見えるかな?」キャンペーン

「ふたご座流星群を眺めよう」キャンペーンに引き続いて、今度は「マックホルツ彗星見えるかな?」キャンペーンをおこなうことにしました。2005年1月7日夜から10日夜の4晩に、肉眼や双眼鏡などですばるのそばに見えるマックホルツ彗星を観察し、このキャンペーンページから報告してください。「ふたご座流星群を眺めよう」キャンペーンと同じように、日本のどこで彗星が見えたかが、集計からわかるしくみです。携帯電話からでも参加できますので、今まで彗星を見たことがないという方もぜひチャレンジしてみてください。

しかし今度はふたご座流星群とは違い、「どの方角でもよいので眺めていれば見ることができる」というわけにはいきません。彗星の位置やどうやって見るかをしっかり理解してください。できればキャンペーン期間前に練習をしておくとよいでしょう。

また、「見えなかった」という報告も貴重な観察結果です。見えなかった場合も是非報告をお願いします。


キャンペーン結果を公開しましたので、ご覧下さい。

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携帯電話用のキャンペーンページへは、 http://www.nao.ac.jp/i/ からアクセスしてください。

観望会・イベント情報

いただいた情報を元に、観望会やイベントの情報を掲載しています。それぞれの詳細については各施設にお問い合わせ下さるようお願いいたします。

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彗星とは

彗星の模式図

彗星の本体は、太陽系ができた50億年前頃に、水やその他の揮発しやすい物質が、太陽から遠く離れたところで固まったものではないかと考えられています。多くの彗星は、冥王星よりはるかに遠い太陽系の果てからやってきます。一度太陽に近づいてから再び太陽系の果てに向かって遠ざかり、二度と戻ってこなかったり、戻ってくる可能性があっても、数千年・数万年後というものがほとんどです。(数年・数十年という周期で太陽のまわりを回っている彗星もあります。)

彗星が太陽に近づくと、彗星本体を作っている物質が太陽の熱で蒸発し、ぼーっと広がった「コマ」を形成します。コマの中心には、物質を放出している彗星本体が、特に明るく「核」として見えることがあります。蒸発した物質の一部はイオンになって、太陽風に吹き飛ばされ、太陽と反対の方向にまっすぐに伸びた「イオンの尾」になります。また、塵が彗星本体から放出されると、太陽の光の圧力によってゆっくり吹き飛ばされ、イオンの尾とは違った方向に向かう曲がった「ダストの尾」になります。

核・コマ・尾の大きさや形がそれぞれの彗星によって違うために、彗星はそれぞれのユニークな形を私達に見せてくれるのです。(図をクリックすると大きな画像を見ることができます。)

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マックホルツ彗星(C/2004 Q2)について

この彗星は、アメリカ・カリフォルニア州に住むアマチュア天文家・マックホルツさんが、2004年8月27日に、口径(レンズや鏡の直径)15cmの望遠鏡でエリダヌス座で発見したものです。発見されたときには11等級とたいへん暗かったのですが、その後、太陽に近づくと共に、地球にも近づき、明るくなってきました。12月下旬には、すでに4等星となって、星のよく見えるところなら肉眼でも確認できるほど明るくなっています。
地球に最も近づくのは、お正月休み明けの1月6日、太陽に最も近づくのが1月25日ですので、年明けから1月下旬にかけては、3等級ほどの明るさになると期待されています。
もうひとつ、この彗星が見やすい理由は、夜中の空に見えるということです。多くの彗星は、太陽に近づいて明るくなるころには、夕方の西空や明け方の東の空に見えるために、薄明の空の明るさと地平線からの高さが低いという悪条件に悩まされることになります。しかし、この彗星の軌道は地球の軌道とよい位置関係にあるため、日本を含めた北半球で見ると、夜中近くの高い位置に見えるのです。

1月にはおうし座からペルセウス座に向かって動いていきますが、1月7日から9日にかけて、おうし座の中にある有名な散開星団すばる(「M45」「プレアデス星団」とも呼ばれます)のそばを通過します。彗星を広い夜空の中から探し出すのは、初めての人にとってはなかなか難しいものですが、この時期なら、肉眼でも見えるすばるが彗星を探す目印になるのです。すばるが見つかったら、そのあたりをまず肉眼で、ぼーっとしている彗星を探してみて、それでも見えなかったら、双眼鏡で探してみると良いでしょう。すばるの星々の鋭い輝きと、ぼーっと雲のように浮かぶ彗星の淡い輝きの競演は、今年の大きな天体ショーのひとつであることは間違いありません。
2004年の春先に出現した彗星は、天気を含めて観察には条件が悪く、眺めることができなかった人も多いのではないか、と思います。そんな人は、このマックホルツ彗星は、絶好のお年玉となるかもしれません。

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マックホルツ彗星はどこに見える?

マックホルツ彗星の位置

※図中に描かれている恒星は5等星くらいまでです

夜8時になれば、マックホルツ彗星はすでに南の空に高く上ってきています。そして、そのまま午前2時頃まで見え続けます。1月7日から10日のキャンペーン期間を過ぎると、さらに明け方近くまで見え続けるようになります。

マックホルツ彗星は、毎日少しずつ移動して、キャンペーン期間中には「すばる」に近づきます。ですから、マックホルツ彗星を見るには、すばるを見つけることから始めましょう。もしすばるがすぐにわからないようでしたら、有名でよく目立つオリオン座を見つけましょう。オリオン座は、4つの星が形作る長方形の真ん中に3つの星が並んだ、わかりやすい形の星座です。長方形の左上にある赤いベテルギウスと右下にある青白いリゲルはほかの星より明るく輝いています。真ん中に並ぶ3つの星のことを「三つ星」と呼びます。三つ星を右上に向かって伸ばすと、赤っぽい明るい星が見つかります。それがおうし座のアルデバランです。そのあたりには、いくつかの星が集まっているように見えるかもしれません。「ヒアデス星団」の星たちです。三つ星からアルデバランを通り過ぎて、さらにそのまま伸ばしていくと、ヒアデス星団よりさらに狭い範囲に、6,7個の星がギュッと集まっているのが見つかるはずです。それが「すばる」です。

マックホルツ彗星の位置を星図に示しました。彗星の位置は、2005年1月5日から1月10日までの、それぞれの日の0時における位置です。違う時刻に見ると、少し移動しているはずです。(図をクリックすると大きな画像を見ることができます。)

1月の午後8時頃に見える星座の位置は「ほしぞら情報」をご覧ください。

マックホルツ彗星の写真

(画像をクリックすると拡大します)

マックホルツ彗星の拡大画像

2005年1月5日 21時42分
滝根町・星の村天文台の10cm屈折望遠鏡で彗星を追跡撮影 f=600mm 
カメラ;Fuji FinePix S2 Pro 露出;ISO 800で584秒間

ヒヤデス・プレアデスとマックホルツ彗星

2005年1月5日 20時54分撮影
カメラ;Fuji FinePix S2 Pro 50mmレンズ ISO800で310秒露出

提供・著作権者:大野裕明

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必要な器材は?

肉眼で

天の川が見えるような星のよく見える場所でなら、器材をなにも使わずに、肉眼で彗星を見ることができるかもしれません。星座を形作る星(恒星)とは違って、小さな雲のようにぼーっと広がった感じに見えるはずです。大きな都市やその周辺では、肉眼で見るのは難しいかもしれません。

双眼鏡で

肉眼で見えないときでも、双眼鏡を使えば彗星を見ることができるかもしれません。ただ、あまり倍率の高い(15倍以上の)双眼鏡や、口径(レンズの直径)の小さな(3cm以下の)双眼鏡は彗星を見るのに適していません。倍率の高い双眼鏡を使うと、見える範囲が狭いために彗星を視野に入れづらいですし、彗星の見え方も暗くなってしまいます。同様に小さな双眼鏡では、彗星があまり明るく見えません。

また、できるだけ、双眼鏡を三脚などに固定して彗星を見るようにしてください。双眼鏡を手で持っていると、どうしても揺れてしまい、あまりよく見えません。

とはいえ、最初からあきらめてしまうのではなく、お持ちの双眼鏡で是非チャレンジしてみてください。器材の能力が不十分なところを、繰り返し観察して慣れることでカバーできることもあります。

望遠鏡で

口径6cm程度の小望遠鏡でも彗星を見ることができるはずです。

倍率はせいぜい20〜30倍程度と、あまり倍率を高くしないようにしましょう。双眼鏡と同じように、倍率を高くすると、見える範囲が狭いために彗星を視野に入れづらいですし、彗星の見え方も暗くなってしまいます。

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見え方

コマが、小さな雲のようにぼーっと広がった感じに見えるはずです。中央には恒星状の強い集光が見えるかもしれません。

マックホルツ彗星の場合尾はそれほど明るくありませんので、肉眼では見えないかもしれません。双眼鏡や望遠鏡でなら尾が見えるかもしれませんので、注意を向けてみてください。

このページの最後にある「関連リンク」で紹介しているページでは、ベテラン天体写真家が撮影した尾をたなびかせたマックホルツ彗星の写真が見られます。 しかし、人間の目はカメラのように光を蓄積することができませんので、残念ながら、(双眼鏡や望遠鏡を使っても)写真のように明るくは見えないことに注意してください。「空に写真と同じような明るい彗星があり、見上げるとあっという間に見つかる」とは考えないほうがよいでしょう。

肉眼に近い見え方の画像

拡大画像(小:94KB | 拡大画像(大:939KB)
淡く見えているマックホルツ彗星 

国立天文台撮影

撮影日時:2005年1月5日21時56分 露出6秒

撮影場所:国立天文台(東京都三鷹市)

撮影機材:Nikon AF Nikkor 50mm F2、Nikon D100(ISO800)

コメント:右側中程にすばる、その下方に緑がかった彗星が写っています。この日、 肉眼では見えませんでした。

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その他のコツ

見る場所

日本全国、どこでも見ることができます。(日本以外の国でも見ることができますが、南半球では場所によって、彗星の高度が低かったり、地平線上に彗星が上ってこなかったりします。)

できるだけ大都市から離れ、近くに街灯など人工の明かりがない場所を選びましょう。

マックホルツ彗星は、大都市や街灯の明かりに比べてとても弱い光しか出していません。人工の明かりの影響があると、それに邪魔されて、彗星がとても見えづらくなります。

見る時刻と時期

日が沈んで暗くなる夜8時には、マックホルツ彗星はすでに空に見えています。それから、午前2時頃まで彗星は見え続けています。

また、キャンペーン期間中でなくても、2004年の年末から2005年1月の終わり頃まで、彗星はずっと空に見えています。キャンペーン期間前に彗星を探してみたり、キャンペーン期間が終わっても、移動していく彗星を観察し続けるのも面白いでしょう。

目を慣らす

明るい場所から暗い場所に出て、10分以上は暗さに目を慣らしましょう。マックホルツ彗星の光はたいへん淡いですので、暗さに十分目を慣らさないと、見るのがなかなか難しいと思われます。双眼鏡や望遠鏡を使う場合でも、やはり目が暗さになれているほうが暗い部分まで見えますので、より楽しめるでしょう。

マックホルツ彗星のように淡い天体の場合、彗星のある位置をまっすぐに見つめるより、目を少しそらし気味にしたほうがよく見えることがあります。視野の中心には、色の判別が得意ですが暗い光の苦手な細胞があり、視野の周辺には、色の判別は苦手ですが暗い光の得意な細胞があるためです。まっすぐに見つめずに注意だけを向けるというのは、慣れないとなかなか難しいのですが、やっているうちに慣れてくると思います。

寒さに負けない

冬の夜に何十分も屋外でじっとしている経験は、普段はなかなかないことではないでしょうか。普通に外出するときよりも、さらに厳重に寒さ対策をおこなってください。普段よりも厚着をしたり、カイロなどを使うのもよいかもしれません。

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関連リンク

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