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電波分光
電磁波を波長(電波では周波数で表すことが多い)ごとに分けることを「分光」と言います。こうして得られる、電磁波のエネルギー毎の強度分布を表したものが「スペクトル」です。
電波スペクトルから分かること
スペクトルの中で、特定の周波数の電波が線のように強く現れたり(輝線)、あるいは暗く抜けたように(吸収線)見られるのは、原子や分子がとびとびのエネルギー状態間を遷移し、特定のエネルギーの電波を放射、あるいは吸収していることを示します。そのため、宇宙空間のガスに含まれる物質の組成を特定できます。また、スペクトル線の強度を比較することで、ガスの量や密度、温度などの物理状態を知ることができます。さらに、ガスが運動している場合は、ドップラー効果によりスペクトルが現れる周波数が移動することから、内部の熱運動や乱流、あるいは円盤の回転やジェットの噴出など、ガスの運動も鮮明に分かります。また、広い周波数帯にわたる連続スペクトルは、熱放射や電子運動など、電波を放射しているメカニズムを判別する情報源になります。
電波分光観測に重要な性能
電波スペクトルには豊富な情報が含まれますが、それを分析するには、フロントエンドやバックエンドの装置に高い性能が求められます。感度が向上すれば、観測の効率が上がり、より弱い輝線を検出して存在量の少ない物質の情報を得ることも可能になります。同時に観測できる周波数帯域が広がれば、より多くのスペクトル線を検出し、より広い速度幅を一度に測定できます。周波数を細かく分ける能力(周波数分解能)が高くなれば、近い周波数に現れる異なる分子の輝線や速度の近いガスが混ざり合うことなく正確なスペクトル線の形状を見ることができ、物質の化学的特徴や運動を精密に求められるようになります。
電波信号の流れ
アンテナで集められた天体からの電波は、受信機の中にあるミクサに入力されます。ここで人工的な基準信号と混合されて、差の周波数を持つ扱いやすい信号(中間周波数)に変換されます(へテロダイン受信)。目的の周波数に近い基準信号と合成することで、特定の周波数を共通の中間周波数として取り出すことができます。この中間周波数の帯域が、一度に観測できる電波の範囲になります。それぞれのアンテナ・受信器からの信号は「相関器」と呼ばれる計算機に集められ、比較・合成することで“1つのアンテナ”として観測を行います。この相関器が周波数情報を取り出す「分光計」の役割を担っています。
アルマ望遠鏡の受信機開発
幅広い周波数の電波で観測を行うアルマ望遠鏡では、10の周波数帯(バンド)に分けて最適な設計で受信機を開発してきました。日本はバンド4、バンド8、バンド10の3種類の受信機を開発し、全66台のアンテナに搭載される受信機を量産しました。受信する波長が短くなるほど精度の要求も高くなり、開発には超伝導技術や精密機械加工技術など、最先端技術が求められます。現在は、「広帯域感度アップグレード」計画の一環で、次世代のバンド8受信機の開発を進めています。
関連リンク
- 【動画】メイド イン 国立天文台!アルマ望遠鏡 受信機開発 第1部 受信機のしくみ編
- 【動画】膨大な信号を瞬時に処理せよ! ACA相関器の開発
- 分光観測(天文学辞典)
- スペクトル(天文学辞典)
- ヘテロダイン受信機(天文学辞典)
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公開日:2026年8月28日