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宇宙天気予報と社会

「ひので」による2017年9月7日6時31分(世界標準時)の太陽観察画像です。右下の白い部分が今回のフレア発生地点付近となります。元の動画と詳しい説明は「ひので」による大規模太陽フレアを起こした活動領域の観測をご参照ください。(クレジット:国立天文台/JAXA/MSU)

Deep Flare Netは、過去の太陽観測データを学習した機械学習モデル(AI)を用いて、太陽フレアが起こりそうかどうかを事前に予測する仕組みです。こうした予測は、専門家だけでなく、社会全体が「備える」ための判断材料として使われることが期待されています。

宇宙天気予報の社会的な価値は、単に事故や故障を防ぐことにとどまりません。現代社会は、人工衛星や通信、電力といった「止まると社会全体が困る仕組み」に強く依存しています。そのため、宇宙天気予報は、社会の安全を静かに支える「見えないインフラ」と言えます。また、AIによる予測技術が発展することで、専門家の数が限られている分野でも、安定した判断を続けられるようになります。これは、将来の防災やリスク管理のあり方そのものを変える可能性を持っています。

現在の宇宙天気予報は、「24時間前に約80%の精度で予測する」性能を持っています。予報の話では、80%という数字に目が向きがちですが、実は「24時間前」という時間の長さが非常に重要です。たとえば、「6時間前に100%の精度で磁気嵐を予測できるモデル」があったとしても、その予測が深夜に出た場合、社会は十分に対応できないかもしれません。寝ている間に磁気嵐が起こり、朝起きたら通信障害や電力トラブルが発生していた、という事態は現実に起こり得ます。

一方で、24時間前に磁気嵐の可能性がわかっていれば、人工衛星を安全な運用モードに切り替えたり、電力会社が送電網の対策を取ったりする時間を確保できます。完璧に当てることよりも、「十分に早く知らせる」ことが、防災・減災の観点では大きな価値を持つのです。宇宙天気予報は、「宇宙の研究が社会の役に立つのか」という問いに対する、非常にわかりやすい答えの一つです。太陽を調べることは、遠い宇宙を知るだけでなく、私たちの暮らしを守ることにもつながっているのです。

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公開日:2026年2月12日

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