国立天文台 メールニュース
No.226(2021年3月31日発行)本間希樹氏が日本天文学会 林忠四郎賞を受賞 他
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.226(2021年3月31日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象などを、メールで お届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ----------------------------------------------------------- ■本間希樹氏が日本天文学会 林忠四郎賞を受賞 ■臨時緯度観測所 眼視天頂儀ほかが日本天文遺産に認定 ■アルマ望遠鏡が科学観測を再開 ----------------------------------------------------------- ■本間希樹氏が日本天文学会 林忠四郎賞を受賞 このたび、国立天文台 水沢VLBI観測所長の本間希樹(ほんままれき)教授 が、2020年度 日本天文学会 林忠四郎賞を受賞しました。受賞対象となった 研究は「超長基線電波干渉計に基づく銀河系構造の研究と巨大ブラックホール・ シャドウ撮像への貢献」です。 本間教授は、超長基線電波干渉計(VLBI)を用いて天の川銀河内の天体の距 離や運動を精密に計測するVERA(ベラ)プロジェクトの中心的役割を担ってき ました。そして、世界最高精度の天体位置観測で天の川銀河の回転速度や質量 といった基本尺度を決定し、その根源に迫る成果を挙げてきました。この研究 で本間教授らは、2017年に「平成29年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」を 受賞しています。 また本間教授は、世界の電波望遠鏡を組み合わせて高い感度と解像度を実現 し、ブラックホールの直接撮影に挑戦するプロジェクト「イベント・ホライズ ン・テレスコープ(EHT)」の日本代表として日本の研究チームをリードし、 M87銀河のブラックホールシャドウの撮像とその画像化の成功に重要な役割を 果たしました。この成果を挙げたEHTチームは、2020年の基礎物理学ブレーク スルー賞を受賞しています。 日本天文学会 林忠四郎賞は、公益社団法人 日本天文学会による表彰制度で、 幅広い分野から天文学関連の独創的な学術研究に対して授与されます。林忠四郎 (はやしちゅうしろう)博士(故人)に京都賞が授与されたことを記念して、 1996年度に創設されました。 ▽日本天文学会林忠四郎賞 受賞者(公益社団法人 日本天文学会) https://www.asj.or.jp/jp/activities/prize/hayashi/recipients/ ▽平成29年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰を国立天文台の研究者が受賞 https://www.nao.ac.jp/news/topics/2017/20170511-award.html ▽史上初、ブラックホールの撮影に成功―地球サイズの電波望遠鏡で、 楕円銀河M87に潜む巨大ブラックホールに迫る https://www.nao.ac.jp/news/science/2019/20190410-eht.html ▽速報・ブラックホールの直接撮像に対して基礎物理学ブレークスルー賞の 授与が決定 https://www.nao.ac.jp/news/topics/2019/20190906-eht.html ▽VERAプロジェクト20年の成果がまとまる―国立天文台水沢120年の歴史が 達成した位置天文学の高精度化― https://www.nao.ac.jp/news/science/2020/20201126-mizusawa.html ■臨時緯度観測所 眼視天頂儀ほかが日本天文遺産に認定 現在の国立天文台水沢VLBI観測所にある「臨時緯度観測所眼視天頂儀及び 関連建築物」が、第3回(2020年度)日本天文遺産に認定されました。この眼 視天頂儀をはじめ関連建築物は、岩手県奥州市の国立天文台水沢内にて保存・ 公開されています。 眼視天頂儀は、前身である臨時緯度観測所(1899年設立)において、地球の 極運動の観測的研究に使われたもので、木村榮(きむらひさし)初代所長によ る緯度変化に関するZ項(木村項)の発見(1902年)という成果に繋がりまし た。1927年まで使用されたこの眼視天頂儀は現在、所内にある木村榮記念館 (注)で展示されています。 かつてこの眼視天頂儀を収納していた眼視天頂儀室、および観測の際の較正 (こうせい)に用いた目標台とこれを収納していた覆屋(おおいや)も、関連 建築物として日本天文遺産に認定されました。これら「眼視天頂儀室」、「眼 視天頂儀目標台及び覆屋」は、2017年に国の登録有形文化財になっています。 日本天文遺産は、歴史的に貴重な天文学・暦学関連の遺産を大切に保存し、 文化的遺産として次世代に伝え、その普及と活用を図ることを目的に、公益 社団法人 日本天文学会が認定するものです。国立天文台に関連する施設・物品 としては、第2回(2019年度)の「6mミリ波電波望遠鏡」に続いて2回目の認定 となりました。 注:木村榮記念館は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため臨時休館中 です。再開の予定は未定です。 ▽日本天文遺産 認定一覧(公益社団法人 日本天文学会) https://www.asj.or.jp/jp/activities/prize/heritage/recipients/ ▽2020年度(第3回)日本天文遺産 認定(木村榮記念館) https://www.miz.nao.ac.jp/kimura/c/news/article-104 ■アルマ望遠鏡が科学観測を再開 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、2020年3月から運用を停止して いたアルマ望遠鏡が、2021年3月17日(チリ時間)、およそ1年ぶりに科学観測 を再開しました。再開後最初に取得した観測データも、品質確認プロセスを 問題なく通過しました。 現在の科学観測は12メートルアンテナでのみ実行されていますが、日本が 開発したアタカマ・コンパクト・アレイ(ACM、愛称「モリタアレイ」)を 利用した観測は、条件が整い次第再開される予定です。 ▽アルマ望遠鏡、科学観測を再開 https://alma-telescope.jp/news/restart-202103 _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2021年3月31日 _____________________________________________________________________