国立天文台 メールニュース
No.177(2017年6月28日発行)ひらかれた太陽物理の新しい扉 CLASPによる観測成功 他
_____________________________________________________________________ 国立天文台 メールニュース No.177 (2017年6月28日発行) _____________________________________________________________________ 国立天文台のイベントや研究成果、注目したい天文現象や新天体発見情報 などを、メールでお届けする不定期発行のニュースです。 どなたでも無料でニュースを受け取ることができます。 ----------------------------------------------------------- ■ひらかれた太陽物理の新しい扉 CLASPによる観測成功 ■全国同時七夕講演会2017 ----------------------------------------------------------- ■ひらかれた太陽物理の新しい扉 CLASPによる観測成功 太陽物理学の大きな課題の一つに「彩層・コロナ加熱問題」があります。 太陽の表面の温度は約6000度でありながら、その上空の彩層は約1万度、さら に上空にあるコロナは100万度以上の高い温度になっています。なぜ太陽内部 から表面に至るまでに下がった温度が外側の彩層やコロナで再び高温になる のか、彩層やコロナはどのような機構で加熱されているのか、という疑問は いまだに解決されておらず、「彩層・コロナ加熱問題」と呼ばれ、長い間研究 者を悩ませてきました。 現在では、この加熱機構には磁場が大いに関与しているであろうと考えられ ています。このことから、彩層からコロナにかけての磁場の状態を精密に測定 することを主な目的とした、太陽観測衛星の計画が進められています。 その予備実験として行われた、「CLASP (クラスプ)」(注) による太陽上空 の彩層・遷移層 (彩層とコロナの間の薄い層) の紫外線域の偏光分光観測が成 功し、彩層・遷移層が複雑な構造を持っていること、磁場の存在を示す偏光成 分があることが明らかになりました。彩層磁場の測定方法としてこれまで行わ れてきた赤外線域での偏光分光観測では、彩層上部より上空の磁場の測定は難 しいため、紫外線域での観測を宇宙空間で行うことが有用とされていますが、 これまでに成功例がありませんでした。今回のCLASPによる観測の成功により、 彩層・遷移層の磁場を測定するためには紫外線域での偏光分光観測が新たな太 陽観測の手法として有用であることが改めて確かめられ、「彩層・コロナ加熱 問題」の解明にも大きく貢献すると期待されます。 2019年には次の「CLASP2」による観測が予定されています。CLASP、CLASP2 で重ねた科学的・技術的な成果を次の太陽観測衛星「SOLAR-C」の開発に役立 て、太陽活動の起源に迫ることを目指します。 注:CLASP (Chromospheric Lyman-Alpha SpectroPolarimeter) は、太陽の 彩層と遷移層から放たれるライマンα線の偏光分光観測を行う装置。 観測ロケットで宇宙空間に打ち上げ、彩層と遷移層の磁場の測定を試み る。この国際共同実験には日米欧の5カ国12研究機関が参加し、国立天 文台の研究者も参加している。観測ロケットは2015年9月に米国のホワ イトサンズから打ち上げられ、約5分間の飛翔時間に太陽彩層の磁場情 報を取得することに成功した。 ▽ひらかれた太陽物理の新しい扉~真空紫外線による偏光分光観測~ http://hinode.nao.ac.jp/news/results/post-42/ ▽第6回機構長プレス懇談会でのCLASP講演 実施報告 「光を測る 観測ロケット実験CLASP―太陽からの微弱な偏光を捉えろ!―」 http://hinode.nao.ac.jp/news/column/6clasp-clasp/ ▽国際共同観測ロケット実験 CLASP http://hinode.nao.ac.jp/KakenS/study-CLASP.shtml ■全国同時七夕講演会2017 今年も、7月7日の七夕 (たなばた) の日や、伝統的七夕の日 (2017年は8月 28日) の前後の期間に、全国で天文や宇宙についての講演会を行う「全国同時 七夕講演会」が、日本天文学会の呼びかけのもとに開催されます。2009年から 続けられてきたこの企画も、今年で9回目となります。宇宙に関する講演会や 七夕にまつわるイベントが各地で行われますので、ぜひお近くの会場に足を運 んでみてください。 各地の開催情報の詳細は「全国同時七夕講演会2017」のウェブサイトをご覧 ください。 国立天文台が主催・共催する講演会は次のとおりです。このほかにも、国立 天文台の研究者が講師を務める講演会が多数企画されています。 ・2017年七夕公開講演会「七夕の夜は宇宙を見上げて」 日程:2017年7月31日 (月) 19:15-21:00 会場:小金井 宮地楽器ホール (東京都小金井市) 内容: 第1部 講演会 「ニュートリノで探る宇宙」 講師:梶田隆章 (東京大学宇宙線研究所 所長・東京大学 教授) 第2部 宇宙のことを聞いてみよう 宇宙に関する質問に天文学者がお答えします 参加方法:ウェブサイトよりお申し込みください お申し込み開始は6月30日 (金) 正午 定員:480名 (先着順) 詳細:2017年七夕公開講演会 「七夕の夜は宇宙を見上げて」ウェブサイト http://www.kokuchpro.com/event/tanabata2017/ ▽全国同時七夕講演会2017 (日本天文学会) http://www.asj.or.jp/tanabata/2017/ _____________________________________________________________________ 発 行:国立天文台 天文情報センター 広報室 発行日:2017年6月28日 _____________________________________________________________________