今週の一枚
引かれ合う銀河たち ヒクソン・コンパクト銀河群40

宇宙空間では単独で存在する銀河は珍しく、ほとんどが集団を構成しています。集団の規模はさまざまで、数個から十数個程度の比較的小さな銀河集団を「銀河群」、それ以上の大規模な銀河集団を「銀河団」と呼んでいます。この「ヒクソン・コンパクト銀河群40」は、うみへび座の方向、約3億光年の距離にある小さくまとまった銀河群です。ヒクソンがまとめた比較的小規模な銀河群(コンパクト銀河群)カタログの40番目に挙げられていることから、「HCG(Hickson Compact Group)40」とも呼ばれます。
銀河の形状に見る相互作用の痕跡
この画像では、渦巻銀河、楕円銀河、レンズ状銀河といったさまざまな形の5つの銀河が肩を寄せ合うようにまとまって見えています。コンパクト銀河群の銀河は、互いの重力で引かれ合い、その相互作用によって特異な形状になっている場合が多々あります。このHCG40の渦巻銀河もおそらく重力による相互作用で複雑な形になったのでしょう。また、コンパクト銀河群では近づきすぎた銀河同士の衝突が頻繁に起こります。ここに見えている楕円銀河も、過去に銀河同士の衝突が起こったことを物語っているのかもしれません。このような多種多様な形状の銀河で構成されるコンパクト銀河群は、銀河の進化を知るための重要な情報を与えてくれているのです。
文:小野智子(天文情報センター)
画像データ
天体 | ヒクソン・コンパクト銀河群40 |
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望遠鏡 | すばる望遠鏡 |
観測装置 | CISCO(近赤外線撮像分光器) |
波長 | Jバンド(1.25マイクロメートル)、K’バンド(2.15マイクロメートル) |
露出 | 480秒(Jバンド)、480秒(K’バンド) |
撮影日時 | 世界時1999年1月14日(Jバンド)、1月12日(K’バンド) |
クレジット | 国立天文台 |