今週の一枚
十一番目の眼

夏の天の川を観測する広視野赤外線カメラOAOWFCの写真です。OAOWFCは、岡山天体物理観測所の開所時(1960年)より活躍し続けてきた口径91センチメートルのカセグレン式望遠鏡を、本体ごと改造したカメラです。近赤外カメラとしては世界最大級の視野(満月1個)を持ち、自動観測をする自律ロボットであることが特徴です。広い夜空から天体を探し出すのが得意なので、普段は主に天の川をパトロールして変光星を探していますが、突発天体が発生したら追跡観測を行います。
歴戦の兵
OAOWFCの土台となった望遠鏡は、1メートルクラスとしては国産第一号機のカセグレン式望遠鏡で、57年前に日本光学工業株式会社(現在の株式会社ニコン)により製作されました。当初より恒星の精密な明るさ測定や、組成のサーベイ的研究をはじめとする多様な研究が行われ、数多くの成果を挙げてきました。これらの研究を進めるために、天文台職員や大学の研究者によって、この望遠鏡専用の観測装置が製作され、観測が行われてきたのです。OAOWFCは、この望遠鏡にとって11番目の観測装置になります。現在の91cm反射望遠鏡は赤外線の目を備え、今晩も静かに夜空を見つめています。
光害の影響なし
スリット越しの青い空は、都市光に照らされた夜空です。だいぶ明るい印象を受けますが、幸いOAOWFC は都市光の影響を受けません。近赤外域では可視光より散乱の影響が小さいので、都市光や月明りの影響はほとんどなく、世界のどこでも、夜空はほぼ同じ暗さなのです。ドーム内の緑や赤の光はデータ取り込み装置類のパネルが光源です。OAOWFCは近赤外線にしか感度をもたないので、これらの光は観測画像に写りません。
文:柳澤顕史(岡山天体物理観測所)
画像データ
撮影日時 | 2016年8月 |
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撮影者 | 飯島裕 |
クレジット | 国立天文台 |
二次利用について | この画像は、研究発表、講演会、学校の授業で利用する場合、許諾なく利用できます。それ以外の場合、事前許諾なしには利用できませんので利用申請をお願いします。特に商用利用の場合は、飯島氏との交渉と写真利用料が必要になることがあります。 |