今週の一枚
太陽観測衛星「ひので」二分の一成人式
2006年の秋分の日に打ち上げられ、今日に至るまで今まで見たこともない高解像度・高精度で太陽観測を継続している「ひので」。太陽観測衛星「ひので」はこれまで、微細にしてかつ大規模な外層大気の中で起こる、静穏の上にも荒々しい、まさに太陽の“息づかい”ともいうべき高温プラズマのさまざまな現象を、じっくりと観測してきました。10年に及ぶ記録をダイジェストでご覧にいれながら、そこには「ひので」が今後も良質のデータをよく咀嚼しえて成人となる姿を見届けようとする親心が託されているように思います。
生きている太陽
太陽が活動する源は、太陽の磁場にあると考えられています。光球下から浮上してくる磁場は、粒状斑中の対流で強化され活動領域や黒点を形成しつつ、彩層~遷移層~コロナという温度逆転の外層大気を加熱するエネルギー源ともなっています。磁場が関わって、スピキュール、ジェットやプロミネンスという微細な磁束管を通じてプラズマを加速・加熱させたり、太陽フレアやCME(コロナ質量放出)で、膨大なエネルギーを突然大規模に解放させたりするメカニズムは未だ解明されたというところまでには到りません。しかし「ひので」の観測により、太陽磁気活動の根源たると考えられている非常に微細な磁気要素の振る舞いは、徐々に明らかになりつつあるということができます。 日食や内惑星の日面経過などの映像でも、この「ひので」搭載望遠鏡群の高性能ぶりは伺い知ることができます。黒点の消長に代表される太陽周期活動は、磁極性を含めるとおよそ22年の周期ということになりますので、「ひので」の観測はまだ道半ばです。次の活動周期を同じ眼、同じ視力で見極めてこそ「一人前」になったといえるのではないでしょうか。
文:渡邊鉄哉(ひので科学プロジェクト長)
映像データ
天体 | 太陽 |
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望遠鏡および観測装置: | 太陽観測衛星「ひので」搭載 可視光磁場望遠鏡(SOT)、X線望遠鏡(XRT)、極端紫外線撮像分光望遠鏡(EIS) |
波長 | SOT:(FG)約380ナノメートルから700ナノメートル(SP)FeI 630.15/630.25ナノメートル、XRT:0.6ナノメートルから20ナノメートル、EIS:(SW)17.1から21.1ナノメートル(LW)24.5から29.1ナノメートル |
クレジット | 国立天文台、ISAS/JAXA 他 |