今週の一枚
すばる望遠鏡の限界に挑んだ最遠方銀河探査

7つのパネルの中心にある赤いシミのような天体は、すばる望遠鏡が発見した131億年前の7つの銀河(ライマンα銀河、以下LAE銀河)です。この中には、すばる望遠鏡が見つけた中で最も遠い天体も含まれます。131億年前のLAE銀河を狙う特別なフィルターNB101をSuprime-Cam(シュプリーム・カム)に装着し、すばる望遠鏡にとって極めて長い合計106時間の観測を行った結果、これまでにない高い感度で超遠方宇宙(131億年前の宇宙)を見渡すことができました。
予想外の結果から新たな宇宙像へ
今回の観測で数十個くらいのLAE銀河が見つかるだろうという当初の予想は見事に外れ、検出できたのはこの7個でした。最初はがっかりしましたが、冷静に考えてみると131億年前の時代からほんの1億年の間にLAE銀河が激増したことになります。 この観測結果は新たな宇宙像を示しています。宇宙再電離のプロセスの中で、LAE銀河を覆い隠す中性ガスが131億年前頃から急激になくなったようです。
文:大内正己(東京大学 宇宙線研究所)
画像データ
天体 | すばるXMMニュートンディープサーベイ(SXDS)領域(くじら座)および宇宙進化サーベイ(COSMOS)領域(ろくぶんぎ座) |
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望遠鏡 | すばる望遠鏡 |
観測装置 | Suprime-Cam |
波長 | NB101(1.01μm)、i(0.76μm)とB(0.45μm)をそれぞれ赤と緑、青で表示 |
露出 | NB101で106時間(SXDSとCOSMOSの合計積分時間) |
撮影日時 | 2010年12月、2011年1月、2012年12月、2013年2月 |
撮影者 | 大内正己ほかNB101探査チーム |
クレジット | 東京大学/国立天文台 |