今週の一枚

70億年前の巨大銀河団形成の現場

70億年前の巨大銀河団形成の現場

銀河は宇宙のなかでしばしば群がって存在しており、その群は銀河団とよばれています。この画像は、宇宙が誕生してからちょうど半分の時代、すなわち今から約70億年前の大型銀河団の姿を捉えた写真の一部(1パーセント)です。一辺はおよそ450万光年に相当します。赤く見える銀河の大半はこの銀河団に属する銀河で、主に3つの塊になって存在しそれらが画像の左上から南西方向に鎖状に連なっています。これらの塊はお互いの重力で引き合ってやがては合体して1つの大きな銀河団へと進化すると考えられ、今その前段階を目撃しているのです。

銀河古代都市のパノラマ

すばる望遠鏡を用いて、銀河団の形成とその中での銀河の進化をパノラマ式に描き出す研究プロジェクト(PISCES:代表、兒玉)の一環として撮られたこの画像は、宇宙年齢が現在の約半分であった、約70億年前の大型銀河団の中心部の姿です。画像の一辺はおよそ450万光年、すなわち我々の銀河系からお隣りのアンドロメダ銀河までの距離の約2倍に相当します。わずかこれだけの空間に数百の銀河がひしめいています。赤く見える銀河の大半は、この銀河団に属する銀河で、主に3つの塊になって存在し、それらが北東(画像の左上)から南西(右下)の方向に鎖状に連なっていることがわかります。 これは、銀河の塊がこのような鎖状構造に沿って重力で引き合って集まり合体し、より大きなシステムへと進化していくという、まさに巨大銀河団の形成現場を見ていると考えられます。すばる望遠鏡はユニークな大型カメラの活躍によって、数々の独創的な成果を上げてきました。銀河団のような巨大な天体の研究もその1つです。現在この7倍もの視野を誇る新しい超大型カメラが動き出しており、このような遠方宇宙の大規模構造の研究がますます飛躍的に進むと期待されます。

文:兒玉忠恭(ハワイ観測所)

画像データ

天体銀河団RX J0152.7-1357
望遠鏡すばる望遠鏡
観測装置主焦点カメラ(Suprime-Cam)
波長V(0.55μm)、R(0.65μm)、i'(0.77μm)
露出120分(V)、116分(R)、75分(i')
撮影日時世界時 2003年9月26日(V)、9月27日(R)、9月26日(i')
撮影者兒玉、他共同研究者
著作権国立天文台

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