今週の一枚

巨大銀河に引き裂かれ、飲み込まれていく小さな銀河

COSMOS J095959+020206

ハッブル宇宙望遠鏡のトレジャリー・プログラムである“宇宙進化サーベイ(コスモス・プロジェクト)”とタイアップして行われたすばる望遠鏡の観測で発見された、引き裂かれた小さな銀河。この銀河は左に見える巨大楕円銀河の衛星銀河で、10億年以上の時間をかけて楕円銀河本体に落ち込んでいく途上にあります。引き裂かれつつある銀河から伸びる尾の長さはなんと50万光年(銀河系のサイズの5倍)もあります。

宇宙進化サーベイ

広大な宇宙の中で、たくさんの銀河が織りなす大規模な構造は、いつ、どうやって生まれ、育ってきたのでしょう。この謎の解明に挑んでいるのが “宇宙進化サーベイ(コスモス・プロジェクト)”です。ろくぶんぎ座の方向の2平方度(満月9個分の広さ)もある天域(コスモス天域)を、ハッブル宇宙望遠鏡をはじめ、すばる望遠鏡など、世界最高性能を誇る望遠鏡だけを使って、さまざまな波長帯で深宇宙探査してきています。

すばる望遠鏡の活躍

すばる望遠鏡は可視光全域で深宇宙探査を行い、コスモス天域で100万個もの銀何を発見し、それらの距離を正確に決めることができました。距離がわかると銀河の織りなす宇宙の大規模な構造の進化が見えてきます。そしてここで紹介している非常に珍しい銀河も発見しました。すばる望遠鏡だからこそ、このような淡い構造を発見することができたのです。銀河は衝突・合体を繰り返し、育ってきているのです。

文:谷口 義明(愛媛大学・宇宙進化研究センター)

画像データ

天体COSMOS J095959+020206(ろくぶんぎ座)
望遠鏡すばる望遠鏡
観測装置Suprime-Cam
波長Bバンド(450nm:青)、r'バンド(620nm:赤)、z'バンド(900nm:近赤外線に近い赤)の3色擬似カラー合成
露出Bバンド(70.3分)、r'バンド(36.0分)、z'バンド(63.5分)
撮影日時2004年1月から2月
撮影者谷口義明及びコスモス・チーム
クレジット国立天文台

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