今週の一枚

太陽塔望遠鏡シーロスタット

太陽塔望遠鏡シーロスタット

太陽塔望遠鏡(通称:アインシュタイン塔)は1928年に購入されました。1924年9月に東京天文台が麻布から三鷹に移転した際に整備された基幹望遠鏡の一つです。写真のシーロスタットはドイツ・ツァイス製でした。この望遠鏡は1960年代半ばまで太陽の分光観測に活躍し、日本の天体物理学を牽引してきました。その役目を終え長い眠りについていましたが、アーカイブ室によってドームの改修、駆動機構の改修が行われ、2013年に機能が復活した姿です。

太陽塔望遠鏡の変遷

太陽塔望遠鏡は、5階屋上のドームにシーロスタットを備え、太陽光を望遠鏡の鏡筒の役目をする塔内に導きます。当初はドイツ・ツァイス製の口径60センチメートルの2枚のガラス製の平面鏡を持ったシーロスタットでしたが、1953年から1957年にかけて平面鏡は日本光学製の熱膨張係数の小さな溶融水晶に、また屈折望遠鏡は日本光学製の色収差のない口径48センチメートル、合成焦点距離22メートルのカセグレン式反射望遠鏡に改造されました。

主な研究業績としては、マグネシウム三重線の輪郭の研究、ドップラー効果による太陽自転の測定、太陽黒点のゼーマン効果、太陽黒点の分子スペクトルの研究などがあります。

2008年に発足したアーカイブ室の手により復活が行われ、2012年にはドームの改修、望遠鏡駆動機構の改修が行われ、焦点部に太陽像を結像し、プリズム分光器によるスペクトルが見られるようになりました。太陽塔望遠鏡の建物は、1998年に国の登録有形文化財になっています。

太陽塔望遠鏡で太陽のスペクトルが見られます

太陽塔望遠鏡はドーム、駆動系の修復が行われ、太陽像を分光器のスリット上に結像できるようになりました。大きな3個のプリズムを使った分光器で太陽光のスペクトルが観察できます。2015年10月23日・24日の三鷹・星と宇宙の日には、50年近い時を経て復活した太陽塔望遠鏡をご覧いただけます。

文:中桐正夫