今週の一枚
夏至の夜の夢

撮影日時 | 2006年8月30日 |
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望遠鏡 | すばる望遠鏡 |
波長(フィルター) | Jバンド(1.25マイクロメートル)、Hバンド(1.64マイクロメートル)、K バンド(2.21マイクロメートル) |
カラー合成 | 青(J)、緑(H)、赤(K) |
観測装置 | CISCO(近赤外線撮像分光器)/ OHS(OH夜光除去分光器) |
露出 | 80秒(Jバンド)、60秒(Hバンド)、80秒(Kバンド) |
撮影場所 | ハワイ島マウナケア |
撮影者 | Yang(ハワイ観測所)、Engineering Observations |
画像処理者 | ランドック・ラムゼイ(国立天文台) |
天体名 | 天王星、ミランダ、アリエル、ウンブリエル、オベロン |
イメージ視野 | 約32 x 47秒角にトリミング |
著作権 | 国立天文台 |
太陽系の7番目の惑星である天王星は環と20個以上の衛星に囲まれています。そのうちの4個と環が、すばる望遠鏡で赤外線を使っての撮像で写しだされています。これらの衛星の名前は英文学の登場人物からインスピレーションを得て名付けられました。左下にあるオベロン(Oberon)はシェイクスピアの「真夏の夜の夢」(A Midsummer Night’s Dream)に登場する妖精の王様の名前です。実は「Midsummer」は「夏至」という意味に読まれた例も多いので、「夏至の夜の夢」と言えます。夏至は1年のうちでもっとも昼間が長い日ですから、夏至の夜は1年のうちでもっとも短い夜ということになります。
地球の回転軸は軌道に対して傾いています。地球が太陽の周りをまわると、太陽に対する回転軸の傾きが変わります。これが季節の変化と昼間の長さの変化の原因となるのです。夏至では、地球の北極が太陽の側にもっとも傾きます。このような理由で、夏至は1年のうちでもっとも長い昼間の日になります。
地球の回転軸の角度は23.4度です。一方、天王星の回転軸の角度は97.9度です。ということは、画像で見えるとおり、天王星は横倒しになって回転していることになります。天王星で夏至が起こると、軸がほぼ太陽の方角を向くことになります。このとき、天王星の大部分から見ると太陽が沈みません。つまり、天王星の「夏至の夜」は存在しないのです。
日本では、今年の夏至は6月22日です。1年でもっとも短い夜の星空を楽しんでください。
文:ランドック・ラムゼイ(国立天文台)