今週の一枚

むりかぶし望遠鏡がとらえた彗星の尾の収束

太陽からやってくるプラズマの風によって、彗星の尾が短時間のうちに形を変えることがあります。今回その様子を石垣島天文台のむりかぶし望遠鏡でとらえることができました。2015年1月には肉眼で見えるほど明るくなったラブジョイ彗星(C/2014 Q2)。太陽からプラズマの風が吹き、彗星から伸びた尾が折りたたまれるように収束し、流されていく様子が写っています。わずか十数分のうちに起こった長さ数十万キロメートルにもおよぶ彗星の尾の変化。太陽系のダイナミックな一面がうかがえます。

ダイナミックに収束する彗星の尾

ラブジョイ彗星は2014年8月にオーストラリアのアマチュア天文家、テリー・ラブジョイ氏によって発見されました。C2(二原子炭素)などの中性分子輝線によって青緑色に輝くコマと、CO+(一酸化炭素イオン)やH2O+(水イオン)などからの分子輝線によって輝くイオンの尾(プラズマの尾)が特徴的な彗星です。コマにあるイオン化した分子は、太陽風とよばれるプラズマ(電離した気体)の風によって流され、イオンの尾を作ります。映像では太陽風の影響によって、短時間のうちにイオンの尾が折りたたまれ、収束し流されていく様子が写っています。この映像は1枚あたり30秒露出で撮影した画像138枚を使って作成しました。尾の動きを見やすくするために、各画像で共通するコマや尾の成分(変化しない成分)を元の画像から差し引いています。このようなダイナミックな変化の観測には石垣島の星空の良さと口径105センチメートルのむりかぶし望遠鏡の集光力が活かされています。

文:花山秀和(石垣島天文台)