自然科学研究機構 国立天文台

耳をすます季節の終わり――春を迎えた野辺山の電波望遠鏡

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耳をすます季節の終わり――春を迎えた野辺山の電波望遠鏡

春、薄暮のもやに包まれる野辺山宇宙電波観測所の45メートル電波望遠鏡。宇宙からやってくる微弱な電波を、巨大なパラボラアンテナが待ち受けています。電波を放っているのは、可視光線では見えない低温で希薄な星間ガス。銀河の運動、星や惑星の誕生など、宇宙の多くの謎を解き明かすための観測をひと冬続けてきた望遠鏡も、5月には観測シーズンを終了します。電波観測は乾燥している冬季に行われ、夏季はメンテナンスなどにあてられます。

電波観測の好適地、野辺山

野辺山宇宙電波観測所の45メートル電波望遠鏡は、ミリ波(波長数ミリメートル前後の電波)で宇宙を観測する望遠鏡です。1982年の観測開始以来、この波長帯で観測する単一の望遠鏡としては長らく世界最大口径(※)の望遠鏡として活躍し、世界の天文学研究者の共同利用を受け入れて電波天文学をけん引してきました。銀河中心の巨大ブラックホールの発見から、星間分子雲の中にある多様な分子の発見まで、数多くの成果を生み出しています。

この波長帯の電波は、大気中の水分子によって大幅に吸収されてしまいます。そのため、湿度の高い温帯にある日本では観測に適した場所は限られています。観測所のある野辺山(長野県南佐久郡南牧村)は、八ヶ岳山麓の標高1,350メートルに広がる高原です。水蒸気量が少ない高地の冬季の気候がミリ波の観測に適しています。

※現在は、アメリカにある口径100メートルのGBT(グリーン・バンク電波望遠鏡)がミリ波を観測できるアンテナとしては最大口径。

(文:内藤誠一郎)