自然科学研究機構 国立天文台

質問5-8)惑星の定義とは?

2006年8月14日から25日までチェコのプラハで開かれていた国際天文学連合の総会で、「惑星の定義」が採択されました。

決定した惑星の定義

  1. 太陽系の惑星とは、「太陽の周りを回り」「十分大きな質量を持つために自己重力が固体としての力よりも勝る結果、重力平衡形状(ほぼ球状)を持ち」「その軌道近くから他の天体を排除した」天体である。
  2. 太陽系のdwarf planetとは、「太陽の周りを回り」「十分大きな質量を持つために自己重力が固体としての力よりも勝る結果、重力平衡形状(ほぼ球状)を持ち」「その軌道近くから他の天体が排除されていない」「衛星でない」天体である。
  3. 太陽の周りを公転する、衛星を除いた、上記以外の他のすべての天体は、Small Solar System Bodiesと総称する。

さらに、冥王星について次の決議が採択されました。

  • 冥王星は上記の定義によってdwarf planetであり、トランス・ネプチュニアン天体の新しい種族の典型例として認識する。

国際天文学連合決議の日本語訳

国際天文学連合決議:太陽系における惑星の定義

現代の観測によって惑星系に関する我々の理解は変わりつつあり、我々が用いている天体の名称に新しい理解を反映することが重要となってきた。このことは特に「惑星」に当てはまる。「惑星」という名前は、もともとは天球上をさまようように動く光の点という特徴だけから「惑う星」を意味して使われた。近年相次ぐ発見により、我々は、現在までに得られた科学的な情報に基づいて惑星の新しい定義をすることとした。

決議5A

国際天文学連合はここに、我々の太陽系に属する惑星及びその他の天体に対して、衛星を除き、以下の3つの明確な種別を定義する:

  1. 太陽系の惑星(注1)とは、(a)太陽の周りを回り、(b)十分大きな質量を持つので、自己重力が固体に働く他の種々の力を上回って重力平衡形状(ほとんど球状の形)を有し、(c)自分の軌道の周囲から他の天体をきれいになくしてしまった天体である。
  2. 太陽系のdwarf planetとは、(a)太陽の周りを回り、(b)十分大きな質量を持つので、自己重力が固体に働く他の種々の力を上回って重力平衡形状(ほとんど球状の形)を有し(注2)、(c)自分の軌道の周囲から他の天体をきれいになくしておらず、(d)衛星でない天体である。
  3. 太陽の周りを公転する、衛星を除く、上記以外の他のすべての天体(注3)は、small solar system bodiesと総称する。

注1:惑星とは、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星の8つである。

注2:基準ぎりぎりの所にある天体をdwarf planetとするか他の種別にするかを決めるIAUの手続きが、今後、制定されることになる。

注3:これらの天体は、小惑星、ほとんどのtrans-Neptunian object、彗星、他の小天体を含む。

国際天文学連合決議:冥王星

決議6A

国際天文学連合はさらに以下のように決議する:

冥王星は上記の定義によってdwarf planetであり、trans-Neptunian object天体の新しい種族の典型例と認められる。

惑星の定義についての経緯と解説

国際天文学連合ではこれまで、どのような天体を「惑星」と呼ぶのかは、定義されていませんでした。しかし、冥王星は次の点で、水星から海王星までの惑星とは違っていることが知られていました。

  1. 水星から海王星までがほぼ同じ平面上を、ほぼ円に近い楕円軌道で公転しているのに対し、冥王星は17度も傾いた軌道を持ち、一部が海王星の軌道の内側に入るほど軌道が円から歪んでいる。
  2. 半径が1195キロメートルしかなく、次に小さい水星の半分以下しかない(ただし、1930年の発見当時は観測精度が低く、地球の二分の一程度の半径と見積もられていた)。

観測技術の進歩により、1990年代から海王星以遠でさまざま天体が発見されはじめ、冥王星を含めて、惑星の定義についての検討が始まりました。例えば、1992年には、冥王星軌道の外側を回っている天体、1992 QB1が発見されました。1992 QB1は半径が100km程度と、惑星にしては小さいと考えられましたが、さらに翌年には1993 FWが発見されます。現在では1000個を超えるこの種の天体は、trans-Neptunian objectまたはエッジワース・カイパーベルト天体と呼ばれています。このような状況下で、冥王星は、海王星以遠にある多くの似たような天体のひとつなのではないかと考えられるようになります。1990年代後半になると、冥王星を、惑星ではなく小惑星の10000番に割り当てようとする考えなどが国際天文学連合内で提案されるようになりました。国際天文学連合は、太陽系研究に関係するメンバー約500人から電子メールで意見を集めましたが、この時は大多数に支持される結論には至りませんでした。

2000年代に入り、海王星以遠の領域には次々と大型の天体が見つかり始めます。2000年には、セレスより大きく、冥王星の半分程度の直径を持つ2000 WR106が、2001年にはさらに大きい2001 KX76が発見されました。そして2005年7月29日、ついに、冥王星より大きいと考えられる2003 UB313が発見されたのです。同時に、2003 EL61および2005 FY9という、やはり冥王星に近い大きさを持つ天体の発見も報告されました。これらの発見によって「惑星とはなにか」という議論が再燃することになります。

2年近い討議と7名の特別委員会での検討がなされ、今年、3年に一度開かれる国際天文学連合(IAU)の総会で、惑星の定義についての決議がおこなわれました。

総会の初めに提出された案では、惑星とは、(a)十分な質量を持つために自己重力が固体としての力よりも勝る結果、重力平衡(ほとんど球状)の形を持ち、(b)恒星の周りを回る天体で、恒星でも、また衛星でもないもの、と定義されました。また、惑星をclassical planetとdwarf planetに分けました。この定義にしたがえば、水星から海王星までの8つがclassical planet、冥王星・セレス・カロン・2003 UB313がdwarf planetです。惑星は合計で12個になり、dwarf planetは今後も増え続けることが予想されました。

しかし、この案には、多くの批判があり、「軌道の側面や天体力学的な側面からの定義をすべき」など、様々な反対意見が出されました。

結局、定義案はひとつにはまとまらず、案を4分割してそれぞれ別々に採決することになりました。その結果、上記のような惑星の定義が採択されたのです。

冥王星・セレス・2003UB313はdwarf planetですが、dwarf planetは惑星ではありません。dwarf planetは今後の観測によって増える可能性がありますが、惑星が増える可能性は低いでしょう。

Q&A

以下の内容は、国立天文台が、IAU総会での採択の結果を解釈するなどして作成したものであり、IAUによって発表・作成されたものではありませんのでご注意ください。

Q:惑星の和名はどうなるか?

A:2007年4月9日、「日本学術会議」の委員会のひとつである「太陽系天体の名称等に関する検討小委員会」が、IAUが決定した新しい天体グループに対する和名を、以下のように発表した。

dwarf planetは、日本語での表記が必要な場合は「準惑星」と表記することを推奨する。ただし、少なくとも適切な概念整理が進むまでの当面の間は、学校教育をはじめ社会一般においては、この用語・概念を積極的に使用することは推奨しない。

エッジワース・カイパーベルト天体、カイパーベルト天体、TNO(trans-Neptunian object)と従来呼ばれてきた天体及び天体群を表す日本語名称として、「太陽系外縁天体」を推奨する。太陽系に関する記述であることが明白である場合は、単に「外縁天体」としてもよい。

small solar system bodiesの日本語名称として、「太陽系小天体」を推奨する。

国際天文学連合における惑星の定義及び関連事項の取扱いについて(日本学術会議)

Q:新しい定義による太陽系の惑星の数は?

A:8個。

Q:その8個とは?

A:水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星。

Q:冥王星は惑星か?

A:準惑星である。

Q:準惑星は惑星か?

A:惑星ではない。

Q:セレスは惑星か?

A:惑星ではない。準惑星である。

Q:2003 UB313は惑星か?

A:惑星ではない。準惑星である。

Q:2003 UB313には名前が与えられるのか?

A:Erisという名前がつきました。詳しくは、アストロ・トピックス(241)をご参照ください。

Q:惑星よりも小さな天体をどう呼ぶのか?

A:その天体が、十分な質量を持ち、ほぼ球状の形をしていて、太陽の周りを回っているが、その軌道付近の天体を掃き散らしていなければ、準惑星である。準惑星の条件を満たしていなければ、太陽系小天体である。太陽系小天体は、いわゆる小惑星、彗星、TNOと呼ばれている天体などを含む。なお、衛星は準惑星、太陽系小天体のどちらにも含まれません。(注釈)衛星の定義は、今後検討されて決定する見込みである。

Q:準惑星に分類される可能性のある候補天体はあるのか?

A:ある。

Q:太陽系で惑星が8より増える可能性はあるのか?

A:増える可能性は低い。

Q:今回の惑星の定義は、他の惑星系にも適用されるのか?

A:今回の定義は、われわれの太陽系に限る。

Q:太陽系外縁天体のなかで、冥王星のような特徴をもつ天体の分類名はなにか?

A:2008年6月11日、IAUによりplutoidという名称に決定しました。詳しくは、アストロ・トピックス(387)をご参照ください。英語名の決定に先立って、2007年4月9日に、日本学術会議により「冥王星型天体」という日本語での名称が決定されました。

Q:カロンは衛星か?

A:カロンは冥王星の衛星である。

Q:「小惑星」や「彗星」という名称は使われなくなるのか?

A:現在の時点でそのようなことはない。例えば、「地球型惑星」や「木星型惑星」のように、IAUで定義されていなくても、教科書で使用されている用語はたくさんある。太陽系小天体の和訳と同様に、「小惑星」や「彗星」といった用語の扱いについても、今後議論されるだろう。