土星の環は、地球から見ると、約15年周期でその傾きが大きくなったり小さくなったりする変化を繰り返しています。そして2009年には、環を真横から見ることになるために、環が全く見えなくなる時期が訪れます。このような現象を「環の消失現象」と呼びます。
このコーナーでは、環が消失するしくみや、土星の環の構造などを解説します。
「環の消失現象のしくみ」について、ムービーにて解説します。またページでは、ムービーの内容の解説もご覧になれます。
太陽系第6番目の惑星である土星は、木星に次いで大きな惑星です。また小望遠鏡でも見ることができる美しい「環(わ)」を持つことで知られています。土星以外の惑星では、木星、天王星、海王星で環が発見されていますが、どれも細かったり、不完全なものだったりで、土星ほど発達した環を持つ惑星は、ほかにありません。
小望遠鏡ではっきり見ることができる環は、外側からA環・B環です。A環とB環の間には隙間(すきま)があり「カッシニの空隙(くうげき)」と呼ばれています。
またB環の内側には半透明で淡いC環があり、空の条件の良い時には、大きめの望遠鏡を使うと見ることができます。
A環、B環、C環のほかにも、探査機などによって環が発見されています。名前のついたものでは、C環の内側にD環、A環の外側に(内側から)F環、G環、E環があります。このほかにも数種類の環が確認されており、中には一周していない弧状の環も発見されています。
環は、(水が凍った)氷が主成分で、数cmから数mの大きさを持つ、数多くの氷粒が集まったものだと考えられています。探査機によって撮影された画像では、環の中にいくつもの筋状の部分があり、これらの筋が集まって、明るい環を構成しています。
環の幅は、いちばん広いB環で約2万5000キロメートルあります。また、B環に次いではっきり見えるA環の幅は約1万5000キロメートルあります。
一方で、これらA環やB環の厚みは、せいぜい1キロメートルであると言われており、最新の研究ではわずかに10メートルと報告されています。土星の環は、その幅に比べて、厚みが大変薄いという特徴を持っているのです。
土星の自転(注1)軸は、土星の公転(注2)軌道面の垂直方向から、約26.7度傾いています。土星の環は、土星の赤道面に位置しますので、公転軌道面からやはり約26.7度傾いているのです。
土星は、その傾きを同じ方向に向けたまま太陽のまわりを、約30年かけて一周(公転)しています。そのため、地球から見たときの環の傾きは、約15年周期で大きくなったり小さくなったりします。(「真横→傾きが北に最大→真横→傾きが南に最大→真横」を約30年で繰り返すため、環の傾きの大きさの変化は、その半分の約15年周期となります。)
1995年頃には真横から見ていた土星の環は、2002年頃には傾きが最大になりました。その後、環の傾きは小さくなっていき、2009年9月には、再び環をほぼ真横から見る位置関係になります(注3)。
土星の環は、その幅に比べて厚みがきわめて薄いため、地球から見て環を真横から見ることになる前後の数日間は、環を見ることができなくなります。これを「環の消失現象」または単に「環の消失」と呼んでいます。環が実際になくなるわけではなく、見えない位置関係になるのです。2009年9月4日にこのような位置関係となり、環の消失が起こります。ただし、土星が見かけ上太陽方向に近いため、実際にこの現象を観察するのは極めて困難です。
また、太陽から見て環が真横になるときにも、環に太陽の光が当たらなくなるために、環は黒く(暗く)なってしまいます。このような位置関係になるのは、2009年8月11日のことです。残念ながらこの日も、土星は日没直後の西空の低空のため、観察はやさしくありません。
注1:惑星の「自転」とは、惑星の本体がコマのように回転する運動
注2:惑星の「公転」とは、惑星が太陽のまわりを回る運動
注3:厳密には、傾きは増減を繰り返しながら小さくなっていく
前の項で述べた通り、土星の環の消失現象は、土星と地球(または太陽)の位置関係により、およそ15年ごとに起こります。このしくみについて、より詳しく説明する解説ムービーを用意しましたので、ご覧ください。
なお、リンク先のページ内にて、ムービーの内容を追った解説文を掲載していますので、合わせてご参照ください。
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【2009年4月30日の土星】
環の傾きが小さいため、2008年の画像(下)と比較すると
国立天文台三鷹 |
【2008年3月16日の土星】
環の傾きがやや大きいため、2009年の画像(上)と比較すると
石垣島天文台 |