2003年には火星の接近がたいへんな盛り上がりを見せましたが、今年も10月から11月頃にかけて火星が地球に接近します。
そこで、国立天文台では5回目となるキャンペーンとして「火星接近!模様が見えるかな」キャンペーンを企画しました。10月29日の夜から11月7日の朝までの間に火星を望遠鏡で観察して、表面の模様が見えたかどうかを、報告ページを使って国立天文台に報告してください。携帯電話を使って、火星を見たその場で報告することもできます。報告をいただいた方には、ささやかなプレゼント画像を用意しています。
キャンペーン期間以前に見たときのことを報告していただいても結構ですし、何度も見た方は何度も報告していただいて構いません。
報告をいただく項目は、「見た日付」「模様が見えたかどうか」「どんな望遠鏡で見たか」「都道府県」「今まで何回火星の模様を見たか」などです。
各地の天文施設では、施設の望遠鏡を一般の方に公開するなど、火星接近に関連したイベントが開かれています。この機会に、お近くの天文施設に足を運んでみてはいかがでしょうか。
また、生命の存在に関するニュースを始めとして、火星は次々と新しい話題を提供しています。本を読んだり、プラネタリウムに行ったりして、火星について事前に予習をしておくと、火星を見たときに想像が広がり、より楽しめるのではないでしょうか。
報告受付は終了しました。ご協力ありがとうございました。下記のリンクから、の集計結果をご覧になれます。
→ 集計結果へ
携帯電話用のキャンペーンページへは、 http://www.nao.ac.jp/i/ からアクセスしてください。
地球は太陽のまわりを約365日で一周しています。(この運動を「公転」と呼びます。)一方火星は、地球よりひとつ外側の軌道を、約687日で一周します。火星よりも地球のほうが軌道を回る速さが速いため、地球は火星を追い越してひとまわりしてから、また火星に追いつくということを、繰り返しています。地球が火星に追いついてから、ひとまわりしてもう一度火星に追いつくまでには、平均すると約780日(約2年2ヶ月)かかります。(この周期のことを「会合周期」といいます。)この周期で、火星と地球は接近を繰り返しているのです。
地球の軌道はかなり円に近いのですが、火星の軌道は少しつぶれた楕円形をしています。また、会合周期がちょうど2年でなく余りの2ヶ月があるために、火星と地球が接近する位置は毎回ずれていきます。そのため、火星が太陽に近いときに地球との接近が起こると地球との距離が近くなり、火星が太陽から遠いときに地球との接近が起こると、地球と火星との距離はそれほど近くなりません。いちばん近い位置での接近で5500万キロメートル程度、いちばん遠い位置で接近が起こると、9900万キロメートルにもなり、接近距離にはおよそ2倍の差があります。
火星の接近というと、最接近の日ばかりが話題になりますが、最接近前後の数週間は、地球と火星はほとんど同じ方向に並んで進んでいるため、しばらくは接近した状態が続きます。
今回、火星は日本時間の10月30日12時頃に地球に最も接近します。
前回の接近(最接近日2003年8月27日)では、火星の軌道が太陽にいちばん近くなる付近で火星と地球が接近したために、5576万キロメートルとたいへん短い距離での接近となりました。今回の接近では、そこまで近い距離にはなりませんが、それでも6942万キロメートルまで接近します。次回の接近以降しばらくは、火星の軌道が太陽から遠いところでの接近が続き、今回の接近より短い距離で火星が地球に接近するのは、2018年を待たなければなりません。
前回2003年の接近では、視直径(見かけの直径)は最大25.13秒角まで大きくなりました。今回の接近でも、視直径は20.18秒角と、かなり大きく見えます。
火星の表面には色の薄い部分と色の濃い部分があり、それが模様を形作っています。この模様は、木星の模様のようなガスによる模様ではなく、火星の固体の表面にある模様ですので、形を変えることはなく、火星の自転につれて刻々と回転していきます。模様自体は変化しないのですが、火星には大気があるため、そこで起こるダストストーム(砂嵐)などによって模様が薄くなったり、見えなくなったりすることがあります。
また、火星の極地方には、極冠と呼ばれる白い部分があります。極冠は、主に二酸化炭素が凍ったものだと考えられていて、季節による温度変化によって蒸発したり凍ったりするために、大きくなったり小さくなったりします。今回の接近の時期は、火星の南半球の季節が夏と秋の間にあたり、南極冠がいちばん小さくなる時期です。南極冠は完全に消えることはありませんが、望遠鏡などの条件によっては、小さすぎて確認することができないかもしれません。反対に北極冠は大きくなる時期ですが、今回の接近時には南極が地球に向かう方向に火星の自転軸が傾いていますので、北極を観察するには不向きな時期です。
画像は、前回2003年の接近時にすばる望遠鏡で撮影した火星です。 極冠と表面の模様をはっきりと見ることができます。
まず、肉眼で火星を探してみましょう。9月にはもうマイナス1等級の明るさになっています。赤く明るく輝いてたいへん目立つため、ほかの星と見間違えることはないでしょう。
図は、10月15日頃であれば午後9時頃、10月30日頃であれば午後8時頃、11月15日頃であれば午後7時頃の東の空を表したものです。この時刻に東の空を見て、赤くてとても明るい星が見つかれば、それが火星だと思って間違いありません。近くには、やはり赤くて明るい、おうし座の1等星アルデバランがありますが、火星のほうがはるかに明るく見えます。(図をクリックすると、大きい図が表示されます。)
図を見るとわかるように、火星は星空の中を、わずかずつ移動しています。これは、地球と火星がどちらも太陽のまわりを回っていて、お互いの位置関係が変わっていくためです。まわりの星との位置関係をよく観察して、毎日の位置を星空の図の中に書き込んでいき、火星の移動を自分で捉えてみるのも面白いでしょう。
火星の模様を観察するには、望遠鏡が必要です。
今回火星は地球にかなり接近しますので、望遠鏡をお持ちの方は模様の観察にチャレンジしてみてください。「かなり接近する」と言っても、望遠鏡で火星を見ると、ずいぶん小さいという印象を受けるのではないでしょうか。今回の接近では火星の視直径は20秒角をわずかに超えますが、それでも、木星の視直径の約半分程度だということには注意してください。
望遠鏡で見るときには、倍率を高くすればするほど模様が細かく見えるようになるのかというと、そうではありません。望遠鏡の性能は口径(レンズや鏡の直径)によってほぼ決まり、それ以上倍率をかけても天体の像が暗くぼけるばかりで細かい部分が見えてこない、限界の倍率というものがあります。一般的には、口径をセンチメートルで表した数字に20をかけた(例えば、口径6センチメートルの望遠鏡であれば120倍)程度が限界の倍率といわれています。
望遠鏡が手近にない方は、身近な天文施設が催すイベントに参加するのはいかがでしょうか。どの天文施設がいつどのようなイベントを計画しているかについては、このページの最後で提供しています「関連情報」を参考にしてください。
どんな望遠鏡を使って火星を見るにしても、最初は模様がほとんど見えないかもしれません。望遠鏡を通して模様を見ると、大望遠鏡が撮影した写真とは違って、模様は大変淡く見えます。その淡い濃淡を捉えるためには目を慣らすことが必要です。小望遠鏡でも、模様が見えないからといってすぐにあきらめず、何度も繰り返してチャレンジしてみましょう。そのうちに見えるようになるはずです。
また、大気の細かい屈折のために、火星の表面が、水の中を覗いているように揺れて見えることも、模様を見えづらくする原因のひとつです。しばらく望遠鏡を覗いていると、ある時ほんのわずかの間大気の揺れが小さくなることがあります。天文施設の望遠鏡では、ひとりであまり長い間望遠鏡を覗いているわけにいきませんが、自分の望遠鏡で火星を見ているときには、このような瞬間を待ってみることも、模様を捉えるのに効果があるかもしれません。
残念ながら、天体観察用の双眼鏡は倍率が低いため、火星の模様を見るのは難しいと思われます。
火星は、地球の1日よりわずかに長い時間(約24時間40分)で自転しています。ですから、何日の何時に火星を見るかによって、見える模様は変わります。
以下の一覧は、それぞれの日のそれぞれの時刻に見える模様の目安を示しています。あくまで目安ですので、あまりこの絵にはとらわれないようにしてください。また、望遠鏡の種類や望遠鏡を覗く方向によって、上下左右が違ったり、像が裏返しになったりすることがありますので注意してください。
---------- ---------- 11月5日20時頃 |
---------- 11月2日20時頃 11月5日22時頃 |
10月30日20時頃 11月2日22時頃 11月6日0時頃 |
10月30日22時頃 11月3日0時頃 11月6日2時頃 |
10月31日0時頃 11月3日2時頃 11月6日4時頃 |
10月31日2時頃 11月3日4時頃 ---------- |
10月31日4時頃 ---------- ---------- |
※この画像は、アストロアーツの「火星くるくる」の画像を利用して作成しました。