今週の一枚

うみへび座TW星を取り巻く塵の円盤

うみへび座TW星を取り巻く塵の円盤

年齢およそ1000万歳の若い星、うみへび座TW星を取り巻く塵(ちり)の円盤をアルマ望遠鏡が高解像度で捉えました。地球から175光年の距離にあるこの星は、惑星が誕生しつつある星としては地球に最も近い天体のひとつです。円盤に刻まれた2本の暗い隙間は、中心星からの距離が、それぞれ天王星軌道(20天文単位)と冥王星軌道(40天文単位)とほぼ同じです。中心星の近くを拡大してみると、地球軌道と同程度、1天文単位の半径を持つ隙間も見つかりました。これほど中心星に近い位置での惑星形成の現場が見えたのは初めてのことで、太陽系に似た惑星系の形成を理解するための大きな一歩と言えます。

文:平松正顕(チリ観測所)

その場で見てきたかのような惑星形成の現場

星・惑星形成の研究者の間では「超有名天体」であるうみへび座TW星。この星を取り巻く円盤の構造やそこでの惑星形成の様子を知ろうと、これまで様々なアプローチで研究が進められてきました。だからこそ「その場で見てきたかのような」画像がアルマ望遠鏡から公開されたときには、相当な衝撃が走りました。円盤のごく中心部から外側にかけての広いスケールで、ここまで見えてくるとは。そして鮮明に写し出された複数の「隙間」は、惑星の存在を期待させるものです。またアルマ望遠鏡は、この円盤における「スノーライン」の存在も直接撮像によって明らかにしています。惑星の形成過程を推し量る上で画期的な発見です。まさに星・惑星形成研究におけるマイルストーンと言える観測です。

文:藤原英明(ハワイ観測所)

画像データ

天体うみへび座TW星
望遠鏡アルマ望遠鏡
クレジットS. Andrews (Harvard-Smithsonian CfA), ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

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