今週の一枚
合体銀河NGC 6240から吹き出す巨大銀河風

約3億光年彼方にある合体銀河NGC 6240と、その周りに広がる銀河風(赤いフィラメント状の構造)の様子が捉えられています。NGC 6240は私たちの住む銀河系とほぼ同じぐらいの大きさの渦巻銀河が二つ合体した銀河で、もはや合体前の姿を留めておらず、全体が奇妙にねじくれた形となっています。今回のすばる望遠鏡による高感度観測によって、NGC 6240の銀河風の詳細構造が明らかになりました。
銀河合体と銀河風
大きな銀河同士が互いの重力で引きあって、最後には衝突・合体してしまうことがあります。このとき、重力相互作用によって銀河の中のガスが支え(角運動量)を失って合体銀河の中心に落ち、銀河の中心部で大量の星が一気に作られます。この激しい星生成(スターバースト)で生まれた大質量星からの強力な放射と大量の超新星爆発が、今度は銀河の外にガスを放り出します。これが銀河風です。銀河風が吹くと、銀河中心に溜まったガスが吹き飛ばされてしまうので、銀河はガス欠となり、星生成が止まってしまいます。銀河風が止むと、またガスの集積が始まり、再び銀河は星を作り始めるかもしれません。銀河風は銀河における星生成と深く関わっているのです。すばる望遠鏡が捉えたNGC 6240の銀河風の構造を詳しく解析することにより、銀河が合体し始めてから少なくとも3回の大きな星生成活動が起こったことが明らかになりました。
文:吉田道利(ハワイ観測所)
画像データ
天体 | NGC 6240 |
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望遠鏡 | すばる望遠鏡 |
観測装置 | Suprime-Cam |
波長 | B(440ナノメートル)、R(660ナノメートル)、Hα(656ナノメートル) |
露出 | 1500秒(B)、900秒(R)、6000秒(Hα) |
撮影日時 | 2014年4月30日 |
撮影者 | 吉田道利、八木雅文 |
クレジット | 国立天文台 |