今週の一枚
2つの望遠鏡でのぞく宇宙の深淵(しんえん)

宇宙の最深部、「ハッブル・ウルトラディープフィールド」をアルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡で観測した画像です。紫色で表示しているのはハッブル宇宙望遠鏡で撮影した銀河(星の集まり)で、オレンジ色で表示しているのがアルマ望遠鏡で撮影した一酸化炭素ガス(星の材料)の分布です。天文学者はこの2つのデータを比較することで、およそ100億年前の宇宙で銀河はどのようなペースで星を生み出していたのか、という大きな謎に挑みます。
遠い宇宙を電波で探る
アルマ望遠鏡で宇宙を観測する場合、一酸化炭素分子や炭素原子、酸素原子のような気体物質が放つ輝線(特定の周波数でだけ発せられる電磁波)と、大きさ1マイクロメートル程度の固体物質である塵(ちり)が放つ連続波(幅広い周波数にわたって発せられる電磁波)の2種類の電磁波を観測することができます。これらはいずれも星の材料となる星間物質からの電波であるため、アルマ望遠鏡が取得するデータは星の材料の総質量や温度・密度などを知る手がかりになります。また、宇宙が膨張しているため、遠方の天体から届く電波は波長が引き延ばされます。輝線を観測する時は、基準の輝線の周波数と実際に観測された周波数を比較することで、その天体までの距離を割り出すこともできます。ハッブル・ウルトラディープフィールドは、平面画像に見えますが、こうして距離を測ってみると実はさまざまな距離にある銀河が重なって見えている、奥行きのある画像であることがわかるのです。
文:平松正顕(チリ観測所)
画像データ
天体 | ハッブル・ウルトラディープフィールド |
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望遠鏡 | アルマ望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡 |
クレジット | B. Saxton (NRAO/AUI/NSF); ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); NASA/ESA Hubble |