今週の一枚

ソンブレロ銀河 M104

ソンブレロ銀河 M104

M104は、春の代表的な星座であるおとめ座とからす座の間にある銀河です。ほぼ真横から見る銀河円盤とそれに沿った暗黒帯、円盤部から突き出したまるい形が特徴的で、その形からメキシコのつば広帽子「ソンブレロ」にたとえられ、「ソンブレロ銀河」とも呼ばれます。小口径の望遠鏡でも比較的見つけやすいメシエ天体の一つですが、眼視でこの特徴的な形を認識するのはなかなか難しいようです。

複雑な構造

M104は、その形の特徴から銀河の形状分類(ハッブル分類)上は、これまで「渦巻銀河」とされる場合がほとんどでした。しかし、近年の大口径望遠鏡による観測や赤外線による観測から、中央のまるい突出部を囲む淡いハローがひじょうに大きな範囲に広がっていることが明らかになりました。加えて、M104のハロー内には、渦巻銀河では通常数百個しか存在しない球状星団が、何千個と存在していることも分かりました。これらの特徴から、現在では、実際は楕円銀河でありながら、その中に円盤状の構造を持つに至ったと考えられるようになりました。今後、巨大望遠鏡や宇宙望遠鏡による観測を重ね、この複雑な構造に至るシナリオが解明されていくのが楽しみです。

104番目のメシエ天体

フランスの天体観測家シャルル・メシエ(1730-1817)が作成した、星雲・星団・銀河をまとめた「メシエカタログ」の104番目にある天体です。しかし、メシエ自身によって出版されたカタログにはM103までしか記載されておらず、後に弟子のピエール・メシャン(1744-1804)が発見、「星雲」としてカタログに追加されたと言われています。イギリスのウィリアム・ハーシェル(1738-1822)は、大口径望遠鏡による観測でこの天体を独立発見し、「銀河」として同定しました。

文:小野智子(天文情報センター)

画像データ

天体M104(ソンブレロ銀河)
望遠鏡すばる望遠鏡
観測装置Suprime-Cam
撮影年2010年
クレジット国立天文台

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