今週の一枚
虚空に浮かぶ超新星残骸 かに星雲(M1)

2005年、すばる望遠鏡で狭帯域フィルタを用いた高赤方偏移の水素ライマンα輝線銀河の観測をやっていた際に、たまたま同じフィルタで酸素の輝線が観測できることを思いついて、短時間の積分で撮った懐かしい画像です。その後、1988年にキットピーク天文台で撮られたCCD画像と比較して、「ジェット」と呼ばれる構造からかに星雲の膨張速度を実測しました。まさに爆発でひろがりつつある星雲を実感することができる画像でした。ここからかに星雲の爆発時期を推定すると、西暦1055年プラスマイナス24年となり、それまでの推定(1100年頃)よりも中国の記録にある1054年にずっと近い時期となりました。この結果は実は論文としても公表しています(Rudie, Fesen, Yamada 2008 MNRAS, 384, 1200)。
この画像を取得してからはや10年。かに星雲はさらに膨張しているはずです。上述のキットピークの画像は「ジェット」部のみでしたので、Suprime-Cam が退役する前に、ぜひ、同じフィルタで新しいかに星雲の全体画像を撮ってもらいたいところです。星雲全体が膨張している様子が見えるはずです。
文:山田亨(JAXA 宇宙科学研究所)
画像データ
天体 | かに星雲(M1) |
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望遠鏡 | すばる望遠鏡 |
観測装置 | Suprime-Cam |
波長 | Vバンド(550ナノメートル:緑)、NB497狭帯域(497.7ナノメートル、FWHM 7.7ナノメートル:赤)、Bバンド(450ナノメートル:青)のカラー合成画像 |
露出 | 2.5分(V)、15分(NB497)、2.5分(B) |
撮影日時 | 2005年10月4、5、6日(世界時) |
クレジット | 国立天文台 |