今週の一枚

中性子星合体からの電磁波放射

「中性子星」は宇宙における極限天体の1つで、太陽の1.4倍の質量をもちながら半径は約10キロメートルしかなく、その密度は1立方センチメートルあたり1兆キログラムにもなります。このような中性子星同士がしばしば連星を成して、それはやがて衝突合体を起こすと考えられています。中性子星が合体するとき、どのように見えるのでしょうか。この映像は、中性子星合体からX線や可視光、電波などの電磁波がどのように放出されるのかを明らかにするために行われたシミュレーションを可視化したものです。

中性子星合体は赤く光る

映像の前半では、中性子星合体によって放出される物質が放つ電磁波の強さを描いています。合体現象は合体時に放出された物質の中野放射性元素の崩壊エネルギーによって輝きます。合体から15日程度で放出された物質はすかすかになり、電磁波を出さなくなります。 後半では中性子星合体によって撒き散らされた物質が放つ光の色を表しました。この色は温度によって変わります。このシミュレーションによって、中性子星合体で放たれる電磁波は可視光線から赤外線の波長をもち、私達の目には赤く見えることがわかりました。

重力波源としての中性子星合体

中性子星合体が起こるとき、一般相対性理論から予測される「重力波」が発生すると考えられています。岐阜県神岡に建設されたKAGRA(かぐら)などの重力波望遠鏡は、中性子星合体からの重力波を直接検出することを目指しています。このシミュレーションによって、重力波が検出されたあとに、どのような電磁波観測をすれば良いかが明らかとなり、重力波と電磁波の観測を合わせた「マルチメッセンジャー天文学」への道を開くことができました。

映像データ

使用計算機Cray XC30「アテルイ」
現象の時間スケール15日間
現象の空間スケールおよそ1015センチメートルから1016センチメートルへ時間とともに膨張
計算をおこなった研究者田中雅臣(国立天文台)
クレジット田中雅臣、仏坂健太、国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

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注:この映像をご利用の際には、4D2Uプロジェクトページ「ご利用上の注意」をご覧ください