今週の一枚

澄んだ空のもとで――アルマ望遠鏡アンテナと金星と天の川

澄んだ空のもとで――アルマ望遠鏡アンテナと金星と天の川

標高2900メートルの場所に建設されたアルマ望遠鏡山麓施設での、夜のひとコマ。山麓施設で性能確認観測を行う日本製12メートルアンテナ(右)と欧州製12メートルアンテナ(左)のあいだに、金星がまばゆく光っています。そして建物のすぐ上には、うっすらと天の川が横たわっています。地平線近くで天の川が見えるのも、金星のまぶしさも、アタカマの澄んだ空のおかげです。

澄んだ空と少ない酸素

アタカマの澄んだ空のもとでは、日本では見ることのできない星空を楽しむことができます。都市部では星々の高度が低くなってくると街明かりやかすんだ空にその光がかき消されてしまいますが、アタカマでは地平線に沈む直前まで星々が輝いて見えます。また大気に含まれる微粒子による光の散乱によって三日月は黄色く見えるものですが、アタカマでは三日月ですらも真っ白でまぶしく見えます。しかしそんな素晴らしい空であっても、標高5000メートル地点ではさほどきれいに星が見えません。酸素が平地の半分ほどしかないため、人間の目と脳が追いつかないのです。酸素ボンベから酸素を吸った瞬間、視野がパッと広がり星々がはっきりと見えるようになります。人間にとっては、もう少しマイルドな環境で星を見るほうが良いようです。

文:平松正顕(チリ観測所)