今週の一枚トップ 今週の一枚 「彗星の圖」(天文奇現象錦絵集) 2013年11月21日 明治の一時期には大衆にわかりやすい錦絵新聞が刷られましたが、これは天文台が所蔵する「天文奇現象錦絵集」の一つで、1882年9月27日の「1882年の大彗星」とそれを驚きながら眺める人々が描かれています。説明文では彗星の大きさや角度を詳しく書き、「外の諸星に異なる事なく」、「吉凶の前兆、豊年の星」といった俗説を「無学の僻説」であると啓蒙する内容となっています。 彗星は他の天体と異なり突如現れたように見えたためか、古くは大変革の前兆とされたり、尾をなびかせる形から「稲星」と名付けられて豊作の兆しとされることもありました。明治に入ってから刷られた「彗星の圖」では打って変わって迷信・俗信をしりぞける内容ですが、裏を返せばそれらが根強く残っており、大衆に科学知識がまだ乏しかったのかもしれません。 2013年11月の末には、アイソン彗星が太陽に最接近します。明るく輝く可能性があるため注目を浴びていますが、多くの天文ファンが心待ちにする様子と、「近代未曾有(めずらしき)の大星」としながらも啓蒙を含む報道をされた「彗星の圖」を比べると、江戸時代の名残から抜け出そうとする明治と純粋に天体ショーを楽しむ平成の間の歴史を感じることができます。 制作年月1882年10月 制作者原胤昭 クレジット所蔵 国立天文台 画像データ ダウンロード 最高解像度(800 x 1189、478KB) 関連リンク 国立天文台 図書室 次の一枚:ヘール・ボップ彗星を追う野辺山45メートル電波望遠鏡 前の一枚:国立天文台 紹介ビデオ 2013 今週の一枚トップ
明治の一時期には大衆にわかりやすい錦絵新聞が刷られましたが、これは天文台が所蔵する「天文奇現象錦絵集」の一つで、1882年9月27日の「1882年の大彗星」とそれを驚きながら眺める人々が描かれています。説明文では彗星の大きさや角度を詳しく書き、「外の諸星に異なる事なく」、「吉凶の前兆、豊年の星」といった俗説を「無学の僻説」であると啓蒙する内容となっています。
彗星は他の天体と異なり突如現れたように見えたためか、古くは大変革の前兆とされたり、尾をなびかせる形から「稲星」と名付けられて豊作の兆しとされることもありました。明治に入ってから刷られた「彗星の圖」では打って変わって迷信・俗信をしりぞける内容ですが、裏を返せばそれらが根強く残っており、大衆に科学知識がまだ乏しかったのかもしれません。
2013年11月の末には、アイソン彗星が太陽に最接近します。明るく輝く可能性があるため注目を浴びていますが、多くの天文ファンが心待ちにする様子と、「近代未曾有(めずらしき)の大星」としながらも啓蒙を含む報道をされた「彗星の圖」を比べると、江戸時代の名残から抜け出そうとする明治と純粋に天体ショーを楽しむ平成の間の歴史を感じることができます。