新年のご挨拶

林正彦台長の写真

あけましておめでとうございます。

昨年はなかなか苦しい年でした。4月に本格化しようとしていたマウナケア山頂での次世代超大型光学赤外線望遠鏡TMTの建設工事が、一部の反対運動のため中断されました。非常に残念なことです。国立天文台では、すばる望遠鏡が建設中であったころから、ハワイ住民の方々とさまざまな機会に対話を行い、また天文学振興財団の協力のもと、ハワイ文化を守るための地域活動を支援してきました。このようなハワイ現地における日々の活動を通して、すばる望遠鏡や、これから建設することとなるTMTへの理解を、住民の方々にお願いしてきました。その結果、住民の大半からはTMTを快く支援していただいています。しかし、まだ全ての方々の合意を得るには至っていません。今年は、何とかこれらの方々の理解を得て、建設の目処を立てたいと思っています。

一方で、2015年にはたいへん嬉しいニュースもありました。東京大学宇宙線研究所の梶田隆章所長がノーベル物理学賞を受賞されたことです。梶田所長は、現在は大型低温重力波望遠鏡KAGRAの責任者を務められています。実は、日本において重力波の検出実験を進めてきたのは国立天文台でした。たとえば三鷹のキャンパス内には、KAGRAのプロトタイプとなった基線長300メートルのレーザー干渉計型重力波検出実験装置TAMA300があります。TAMA300は、2000年ごろに当時の世界最高感度を達成し,大型干渉計として世界に先駆けて長期間観測も行いました。そして、現在KAGRAに参画している研究者の多くが、TAMA300で経験を積んできた人たちです。KAGRAにおいては、国立天文台は主干渉計、防振装置、補助光学系、ミラー性能評価など、主要部分を担当しています。KAGRAが一日も早く最終性能に達し、重力波が日常的に検出できるようになる日が来ることが楽しみです。

さて、アルマ望遠鏡はいよいよ第三期(サイクル3)の共同利用に入りました。今期の特徴は、10キロメートル程度の長い基線を用いた観測が初めてオープンされたことです。その結果、ハッブル宇宙望遠鏡より10倍シャープな分解能0.01秒角の画像が撮れるようになります。つまり、昨年目を見張ったおうし座HL星の円盤のような画像が、今後は次々と出てくるはずです。今年中には、そのような驚くべき画像をいくつか皆さんに見せられるのではないかと期待しています。

すばる望遠鏡は、超広視野主焦点カメラ(Hyper Suprime-Cam)による観測を順調に続けています。昨年は、このカメラで描き出された最初のダークマター地図をお見せしました。また、昨年は宇宙におけるリチウム元素の生成現場を直接観測するなど、重要な成果を挙げ続けています。

最後になりましたが、日本の天文学の目覚ましい発展は、国立天文台職員の努力はもとより、政界、官界、産業界の皆様のご支援と、何にも増して多くの国民の皆さんのご理解によって成しとげられてきました。年頭にあたって、あらためてこれらの方々に感謝を申し上げ、国立天文台のさらなる発展に向けて努めていきたいと思います。