アストロ・トピックス

No.552: 板垣さん、おとめ座方向にある銀河に新たな超新星を発見

 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、5月15日 (世界時、
以下同じ) の観測から、17.0等の超新星を発見しました。この超新星は、おと
め座方向にある NGC 5177 銀河の中にあり、板垣さんご自身が所有する口径60
 センチメートルの反射望遠鏡 (f/5.7) を用いたCCD観測 (限界等級19.0等) 
により撮影された複数の画像の中から発見されました。
 この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報
中央局に報告され、この超新星は「2010cr」と命名されました。
 この天体の発見日時、位置、発見等級は次のとおり。

発見日時 2010年5月15.61日 = 5月15日14時38分 (世界時)
赤経 13時 29分 25.03秒
赤緯 +11度 47分 46.4秒 (2000年分点)
発見等級 17.0等
 板垣さんの観測によると、この超新星は NGC 5177 銀河の中心から東に11秒
角、南に3秒角離れた位置にあります。板垣さんは、発見前の5月1日に撮影し
た同じ場所の画像にも、この天体が16.3等で写っていたと報告しています。し
かし、それ以前に撮影した画像には、2007年3月17日の撮影 (限界等級19.0等)
 を含め、この天体は写っておらず、DSS (注) の画像にもこの天体は写ってい
なかったということです。

 アメリカのニューヨーク州の D. Bishop さんは、4月16日に撮影した画像に
この天体を18.0等で独立に発見していたと報告しています。

 板垣さんは去る5月9日に、おとめ座の別の銀河に超新星を発見したばかりで
す。板垣さんによる超新星の発見は、これで今年に入って3個目です。また、
今回の発見を含めた超新星の通算発見数は59個 (独立発見を含む) となり、日
本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多記録をさらに更新中です。


注:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエ
ル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オースト
ラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化し
たもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体
まで写っている。

 

参照:

 CBET No. 2281 : SUPERNOVA 2010cr IN NGC 5177 (2010 May 15)

 国立天文台 アストロ・トピックス (551)
  板垣さん、おとめ座方向にある銀河に超新星を発見
   http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000551.html

 日本人が発見した超新星一覧 (国立天文台)
  http://www.nao.ac.jp/new-info/supernova.html

 

      2010年5月19日            国立天文台・広報室