自然科学研究機構 国立天文台

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No.540: 太陽観測衛星「ひので」、太陽極域に強い磁場を発見!

 国立天文台を含む日米欧国際研究チームは、太陽観測衛星「ひので」に搭載
された可視光・磁場望遠鏡を用い、これまで困難だった太陽極域の磁場の観測
を行いました。その結果、太陽の極域には黒点並みの1000ガウスを超える強い
磁場が存在することを発見しました。

 黒点の磁場は、太陽の北極域と南極域を貫く弱い磁場が太陽内部のダイナモ
機構で増幅されたものが源になっていると考えられていますが、その詳細はよ
く分かっていません。また、極域は、地磁気擾乱 (じょうらん) などを引き起
こす高速太陽風の源でもありますが、その加速機構も明らかにはなっていませ
ん。こういったことから、極域の詳細な磁場の観測は極めて重要と考えられて
きました。
 しかし、太陽の極域は地球方向からは斜めに見ることになるため、表面の様
子が非常に観測しにくい場所となり、解像度の低い観測しかできませんでし
た。

 太陽観測衛星「ひので」は、極めて高い解像度を持つ可視光・磁場望遠鏡を
用いて、これまでにない鮮明な極域の磁場画像の取得に世界で初めて成功しま
した。その結果、これまで数ガウスの弱い広がった磁場があるとされてきた極
域に、黒点並みの1000ガウスを超える強さの斑点 (はんてん) 状の磁場 (磁場
斑点) が存在することを発見したのです。
 今回発見された磁場斑点は、黒点に比べると、大きさが小さく (4000キロ
メートル弱)、かつ寿命が短く (10時間程度)、形状が不規則で、太陽の極域全
域に存在するという特徴があります。また、通常黒点は相反する極性を持つの
に対し、すべてが同じ極性を持つという著しい性質を持っています。

 今回の発見は、これまでの太陽極域の磁場についての概念の変更を迫る、極
めて重要なものです。極域における強い磁場の存在は、ダイナモ理論の矛盾の
一つを解決する可能性を持ち、黒点形成の謎の解明に道を開くものです。ま
た、今回の結果は、このような磁場斑点を通して、アルベン波により太陽風が
高速に加速されていることを強く示唆します。
 さらに、「ひので」に搭載されたX線望遠鏡によるこれまでの観測から、
ジェット現象など極域に予想外の活動が見られることが分かっていましたが、
今回の発見された強い磁場斑点は、これらの活動現象にも関与している可能性
が考えられます。

 太陽の極域の観測は、今後の太陽活動を予測する上でも極めて重要です。今
まで予想以上に低かった太陽活動が上昇の兆しを見せる中、今後の「ひので」
による継続的な精密観測により、太陽活動周期や太陽の地球環境への影響の理
解が進むことが期待されます。

 これらの一連の研究は、国立天文台の下条圭美 (しもじょう ますみ) 助
教、常田佐久 (つねた さく) 教授らよりなる、日米欧国際研究チームによっ
て行われました。
 また、これらの研究成果は、米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル
ジャーナル」の2008年12月1日号と2009年11月20日号に掲載されました。

参照:

 「ひので」衛星、太陽極域に強い磁場を発見 (国立天文台)
  http://hinode.nao.ac.jp/news/100309PressRelease/

 国立天文台 ひので科学プロジェクト
  http://hinode.nao.ac.jp/

 "The Magnetic Landscape of the Sun's Polar Region"
  Tsuneta S., et al., 2008, ApJ 688, 1374

 "The Relation Between Magnetic Fields and Coronal Activities in the 
Polar Coronal Hole"
  Shimojo M., Tsuneta S., 2009, ApJ 706, L145

 

      2010年3月15日            国立天文台・広報室

国立天文台 メールニュース

国立天文台 アストロ・トピックスは、2010年6月まで発行していたメールニュースです。2010年7月からは、「国立天文台 メールニュース」として装いも新たにし、注目いただきたいトピックスの主要な内容とその詳細情報の参照先をお届けしています。

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