アストロ・トピックス

No.538: ALMAバンド10受信機開発者が超伝導科学技術賞を受賞

 超伝導に関係する分野で卓越した研究成果をあげた研究者や開発者、また、
超伝導研究推進に貢献した人物などに授与される「超伝導科学技術賞」(注1)
を、国立天文台先端技術センターの鵜澤佳徳 (うざわ よしのり) 准教授を
リーダーとする開発チーム (注2) が受賞しました。  国立天文台のバンド10
受信機開発チームは、情報通信研究機構の研究開発者と協力して、ALMA (アル
マ:アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計) に搭載される受信機の開発を行っ
ています。

 ALMAには、宇宙からの微弱な信号を効率よく受信し伝送することを可能にす
るために、究極の超伝導技術や半導体技術などを利用した10種類の受信機が搭
載されます。その中でも、バンド10受信機 (周波数帯787-950ギガヘルツ) 
は、最も開発が難しいとされてきました。開発チームは、昨年、このバンド10
受信機の開発に成功し (国立天文台アストロ・トピックス (481) )、この業績
が高く評価されたことが、今回の受賞につながりました。

 鵜澤氏は、「受賞者だけでなく、それ以外の多くの方のご支援のおかげだと
思っています。今後の課題も多くありますが、ALMAの完成を目指して開発を続
けていきます」と、喜びを口にしています。

 この授賞式は、超伝導科学技術研究会主催の第36回シンポジウム開催ととも
に、4月13日にタワーホール船堀 (東京都江戸川区) にて執り行われる予定で
す。

 今回の受賞以外にも、開発チームの小嶋崇文 (こじま たかふみ) 氏が、
バンド10受信機に用いられるSIS (注3) ミキサの開発で、第27回 (2009年秋
季) 応用物理学会講演奨励賞を受賞したほか、このSISミキサの写真が、英国
の物理学論文誌「Superconductor Science and Techonology」2009年11月号の
表紙を飾るなど、バンド10受信機の開発が国内外で高く評価されています。

注1:社団法人未踏科学技術協会が年1回授与する賞で、今年で14回目となる。
最初の高温超伝導体が発見された年から10年目に当たる平成8年度に、 同法人
の超伝導科学技術研究会によって創設され、以降毎年、超伝導科学技術の研究
に関して卓越した業績を残された方々に授与されている。

注2:開発チームのメンバー
鵜澤佳徳 (うざわ よしのり、国立天文台)
Kroug Matthias (くろっぐ まてぃあす、国立天文台)
武田正典 (たけだ まさのり、情報通信研究機構)
小嶋崇文 (こじま たかふみ、大阪府立大学大学院、国立天文台)
藤井泰範 (ふじい やすのり、国立天文台)
野口卓 (のぐち たかし、国立天文台)
王鎮 (わん つぇん、情報通信研究機構)

注3:Superconductor Insulator Superconductor の略、超伝導体-絶縁体-超
伝導体の意味。受信機の中心部として、宇宙からの微弱な信号を検出するため
に用いられる。

参照:

 国立天文台 アストロ・トピックス (481)
  「世界最高性能のサブミリ波 (テラヘルツ) 受信機の開発成功」
   http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000481.html

 国立天文台 ALMA推進室
  http://alma.mtk.nao.ac.jp/

 国立天文台 先端技術センター
  http://atc.mtk.nao.ac.jp/

 超伝導科学技術賞 (社団法人 未踏科学技術協会)
  http://www.sntt.or.jp/~fsst/shou1.html

 

      2010年3月11日            国立天文台・広報室