アストロ・トピックス

No.516: 多少の活発化が予想されるしし座流星群

 しし座流星群と言えば、2001年に日本で見られた流星嵐 (あらし) を思い出
す方も多いことでしょう。今年は、この2001年と比較すると数十分の一にも及
びませんが、ここ数年の中では少々多めに出現するかもしれない、と予想され
ています。

 しし座流星群は、11月中旬ごろに活動する流星群です。これまで、母天体
テンペル・タットル彗星 (すいせい) (55P/Tempel-Tuttle) の公転周期である
およそ33年ごとに、流星雨、あるいはもっと規模の大きい流星嵐が観察されて
きました。近年では1998年から2002年にかけて、数回の大規模な流星嵐が観察
され、日本でも2001年に1時間あたり千個を超える流星嵐が観察されました。
しかし、ここ数年は流星の元となるチリの粒が濃密な部分も遠ざかり、ほとん
ど見られない程になっています。ところが近年の理論に基づく研究結果による
と、今年は約500年前に母天体から放出された古いチリ粒の流れの中を地球が
横切り、ここ数年の中では「やや多め」に観察できるかもしれないと予想され
ているのです。

 この研究によれば、しし座流星群が最も多く出現する「極大」は、11月18日
の6時から7時ごろ (日本時、以下同じ) と予想されます。この時間帯の観察に
適しているのは、中央アジアの近辺です。残念ながら日本では、この時間帯
は、明け方空が明るくなった後のため、最も活発な様子を観察することはでき
ません。しかし、空が明るくなる直前の4時から5時台にかけて、流星が急に増
えるのが観察できるかもしれません。

 気になる流星数は研究者によっても違いますが、ZHR (注) の値では、8月に
見られるペルセウス座流星群や、12月に見られるふたご座流星群の2倍にあた
る200程度と予想されます。しかし、日本で見える時間帯は、この数分の一と
なってしまうでしょう。
 一つの予測に基づくと、日本で4時から5時の1時間に見られる流星数は、ZHR
の値で約55個と計算されます。このとき、実際に一人が見ることのできる流星
数は、6等星が見えるような空が暗い場所では1時間に約35個ですが、4等星が
見えるような一般的な場所では10個弱、また2等星しか見えないような市街地
ではさらに少なくなり2-3個くらいとなります。
 この予想値は誤差が大きく、実際には、見える流星がこれより少ないことも
十分に考えられます。また、極大が遅くなると日本で見られる流星数が少なく
なり、逆に早まると多くなる可能性も考えられます。実際、昨年は、極大が予
想よりも1時間程遅く観測されました。

 このような状況を考えると、今年は、しし座流星群の観察を広くお勧めでき
る状況ではないため、国立天文台ではキャンペーンのようなイベントを実施し
ませんが、熱心に流星を観察してみたいという方は、この機会にぜひ挑戦して
みてはいかがでしょうか。11月18日の明け方は、月明かりにじゃまされること
もなく、流星の観察には好条件です。かなり寒い時期ですので、観察する時に
は、暖かい服装をするよう気をつけて臨んでください。

注:ZHRとは、1時間あたりの天頂修正流星数と呼ばれる値で、雲が無く、6.5
等級の星まで見え、流星群の放射点が天頂にある理想的な条件で一人による観
測を仮定した場合の1時間あたり流星数。一般的には、実際に見える流星の数
は、これよりもかなり少ない。

参照:

  国立天文台トップページ
  http://www.nao.ac.jp/
 ※しし座流星群の情報ページは、このトップページからリンクします。

 世界天文年の流星群 (国立天文台)
  http://www.nao.ac.jp/phenomena/20090000/index.html

 国立天文台・天文ニュース (497)
  2001年「しし座流星群」出現概況
http://www.nao.ac.jp/nao_news/data/000497.html

 

      2009年11月13日            国立天文台・広報室