アストロ・トピックス
No.470: 西山さんと椛島さん、いて座に新星を発見
福岡県久留米市の西山浩一 (にしやまこういち) さんと、佐賀県みやき町の 椛島冨士夫 (かばしまふじお) さんが、4月21日 (世界時、以下同じ) 等の観 測から、いて座に新星らしき天体を発見しました。 この天体は、4月21.681日に焦点距離105ミリメートルのカメラレンズを使用 したCCD観測によって12.5等の明るさで発見されましたが、USNO-B1.0 (注1) カタログによると発見位置の近くには暗い星が存在したことや、発見直前の4 月18.705日の観測では13.5等よりも暗かったことから、当初は変光星が増光し たものではないかと推測されました。しかし、県立ぐんま天文台 (群馬県高山 村) の衣笠健三 (きぬがさけんぞう) さんらのグループが、同天文台の1.5 メートル反射望遠鏡を用いて、4月27日に低分散および高分散分光観測を行っ たところ、観測から得られたスペクトルは、極大期を過ぎた古典的新星 (注2) の特徴を示しました。この観測結果から、新星であることが確認されたもので す。 この天体の発見日時、位置、発見等級は次の通りです。 発見日時 2009年4月21.681日 = 4月21日16時21分 (世界時) 赤経 17時 44分 08.44秒 赤緯 -26度 05分 48.7秒 (2000年分点) 等級 12.5等 なお位置は、4月28日にぐんま天文台によって観測された値です。この位置 は、当初増光したと考えられた USNO-B1.0 カタログの星とは約1.4秒角離れて おり、今回の新星はこの星とは別の天体である可能性もあります。 また西山さんと椛島さんは、この新星の等級を4月21.711日および22.720日 に11.7等、23.760日に12.3等、25.683日に12.2等、27.815日に12.4等で観測し ています。 西山さんと椛島さんによる新星発見は、昨年9月のさそり座新星以来で、通 算6個目となりました (注3)。お二人のさらなる活躍を期待します。 注1:USNO-B1.0 は米国海軍天文台 (United States Naval Observatory) に よって作成された天体カタログのひとつ。全天域の約10億個の恒星および銀河 についての位置、等級のほか、恒星については固有運動も記載されている。限 界等級の値は天域によって変わるが約21等である。 注2:恒星の性質は、分光観測で得られたスペクトル線の振る舞いから知るこ とができる。新星の場合、そのスペクトル線で水素のバルマー線に強い輝線が みられるものを古典的新星と呼んでいる。 注3:このほかに、M31銀河等の天の川銀河外の新星も多数発見している。 参照: IAUC No. 9041 : NOVA SAGITTARII 2009 (2009 May 5) VSOLJ ニュース (213) : 日本変光星観測者連盟 新星の発見確認に公開天文台がまたも活躍 (2009年5月7日) 国立天文台 アストロ・トピックス (409) 西山さん、椛島さん、櫻井さんがさそり座に新星を発見 http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000409.html 2009年5月8日 国立天文台・広報室