アストロ・トピックス

No.458: 板垣さん、新彗星を発見

 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、3月14日 (世界時、
以下同じ) の観測から、くじら座の方向に、コマの直径が70秒角、明るさが
12.8等の彗星を発見しました。
 この彗星は、栃木県高根沢町の観測所にある口径21センチメートルの反射望
遠鏡 (f/3、視野角2.2度) を用いたCCD観測より得られた複数枚の画像から、
北海道札幌市の金田宏 (かねだひろし) さんが開発した、移動天体を自動的に
検出するソフトウェアを利用して発見されました。
 この発見は、九州大学の山岡均 (やまおかひとし) さんを通じて国際天文学
連合電報中央局に報告され、「C/2009 E1」という認識符号が与えられまし
た。また通称名は、板垣 (Itagaki) 彗星となりました。
 この天体の発見日時、位置、発見等級は次の通り (注)。
発見日時 2009年3月14.41509日 = 3月14日9時58分 (世界時)
赤経 2時 48分 07.10秒
赤緯 +8度 23分 31.0秒 (2000年分点)
発見等級 12.8等
 発見時刻については、中野主一 (なかのしゅいち) さんによって修正報告さ
れました。また中野さんは、3月14.424日の彗星画像から全光度を11.9等と測 
定し、彗星のコマには弱い中央集光があり、南方向に尾があるようだと付け加
えています。
 また、埼玉県上尾市の門田健一 (かどたけんいち) さんは3月15.41日にご自
身が所有する口径25センチメートル反射望遠鏡 (f/5) を用いて撮影した画像
から、彗星のコマの直径が3.8分角、全光度は10.8等、中央集光が強く、尾は
見られないと報告しています。
 この彗星は、3月中は夕方の低空に約10等級の明るさで見られそうです。4月
に入ると見かけの方向が太陽に近くなるため、観測が難しくなります。
 発見者の板垣さんはベテランのアマチュア天文家で、これまで多くの超新星
を発見しています。また昨年9月には、一世紀にわたって行方不明となってい
たジャコビニ彗星 (P/2008 R6 = D/1896 R2) の再発見をしていますが、新彗
星の発見は今回が初めてとなりました。
 発見者自身の観測による新彗星発見で、彗星に日本人の通称名がついたもの
としては、2002年12月に発見された工藤・藤川彗星につぐ久々の快挙です。
注:発見時刻は、板垣さんが撮影した観測のうち、中野さんが時刻を補正した
最初のもの。また位置の測定は、金田さんによる。
 
参照:
 CBET No. 1721 : COMET C/2009 E1 (ITAGAKI) (2009 Mar 15)
 IAUC No. 9026 : COMET C/2009 E1 (ITAGAKI) (2009 Mar 15)
 日本人が発見した新彗星一覧
  http://www.nao.ac.jp/new-info/comet.html
 国立天文台 アストロ・トピックス (412)
  板垣さん、金田さん、一世紀にわたって行方不明だった彗星を再発見
   http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000412.html
 
      2009年3月17日            国立天文台・広報室