自然科学研究機構 国立天文台

No.449: すばる望遠鏡、宇宙暗黒時代の終焉の解明に挑戦

 ビッグバンで始まった直後の宇宙は、全体としてはシンプルな世界でした。
そこには陽子と中性子、それに電子からなるプラズマが満ちていました。宇宙
誕生から約38万年後には、宇宙の膨張に伴って全体の温度が下がり、それまで
宇宙を満たしていたプラズマは水素原子へと姿を変えたと考えられています。
水素原子ガスが集まると、星が誕生し、光を放ちます。しかし、それにはしば
らく時間がかかりました。この間に、宇宙ではどのようなことが起きていたの
でしょうか。その様子はいまだに観測的に明らかにはなっていないため、文明
史になぞらえて宇宙の暗黒時代と呼んでいます。
 宇宙の暗黒時代が終わりを迎えたのは、宇宙が誕生してから10億年ほどたっ
た頃でした。宇宙のあちこちで誕生した“天体”が強烈な光を放ち、宇宙を満
たす水素原子ガスを次々と電離させ、ふたたびプラズマの状態に戻したと考え
られています。これを、宇宙の再電離と呼んでいます。宇宙を再電離させ、暗
黒時代を終わらせた天体の正体はいったいなんであるのか。その候補の一つに
挙げられているのが、宇宙で最初の銀河たちです。この時代に、どれくらいの
数の銀河が、どれくらいの光を放っていたのでしょうか。
 これらの疑問を解決するため、国立天文台などの研究チームはすばる望遠鏡
主焦点カメラを使って、初期宇宙における銀河を観測しました。約120億光年
の距離にある若い銀河の大集団をターゲットに選び、水素を電離させるエネル
ギーを持った光だけを通す特製のフィルターを用いて198個の銀河を撮像観測
し、光の強さを測定したのです。その結果、17個の銀河から水素を電離させる
エネルギーを持った光が検出されました。さらに興味深いことに、いくつかの
銀河からは予想を上回る強さの光が検出されました。もしかすると、このよう
に強い光を放つ銀河が、宇宙の暗黒時代を終わらせる立役者だったのかもしれ
ません。
 研究チームでは、どんな天体がどのように宇宙の暗黒時代を終わらせたのか
明らかにするため、新たな観測装置などを用いて研究を進めたいと話していま
す。
 この研究結果は、2009年2月発行の米国の天体物理学専門誌「アストロフィ
ジカル・ジャーナル」に掲載される予定です。
 
参照:
 「すばる望遠鏡、遠方宇宙の銀河からの強力な紫外線の検出に成功
  -宇宙暗黒時代の終わりの解明に向けて前進」
  http://www.subarutelescope.org/Pressrelease/2009/02/09/j_index.html
 「最も遠い銀河の世界記録を更新」
  -宇宙史の暗黒時代をとらえ始めたすばる望遠鏡
  http://www.subarutelescope.org/Pressrelease/2006/09/13/j_index.html
 すばる望遠鏡主焦点カメラ Suprime-Cam
  http://www.subarutelescope.org/Introduction/instrument/j_SCam.html

 
      2009年2月17日            国立天文台・広報室

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国立天文台 アストロ・トピックスは、2010年6月まで発行していたメールニュースです。2010年7月からは、「国立天文台 メールニュース」として装いも新たにし、注目いただきたいトピックスの主要な内容とその詳細情報の参照先をお届けしています。

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