アストロ・トピックス
No.420: 「次世代スーパーコンピューティング・シンポジウム2008」で、国立天文台の斎藤研究員が最優秀賞を受賞
国立天文台 天文シミュレーションプロジェクト (以下、CfCA) の斎藤貴之 (さいとうたかゆき) 研究員が、「次世代スーパーコンピューティング・シン ポジウム2008」 (主催:理化学研究所、開催日程:2008年9月16日・17日) の ポスターセッションで、最優秀賞を受賞しました。 このシンポジウムは、次世代スーパーコンピュータの開発を進めている理化 学研究所 (以下、理研) が主催するもので、広く日本の計算機関連の研究者や メーカーが集まり、次世代スーパーコンピュータの切り開くサイエンス、その ための技術的ブレークスルー、高度な利用方法、人材育成について議論する ためのものであり、今回で3回目になります。 斎藤研究員は、このシンポジウムのポスターセッションにおいて、「衝突銀 河の超高分解能シミュレーション:スターバーストと星団形成」と題した発表 を行いました。内容は、従来の銀河衝突シミュレーションと比較して粒子数で 2桁上回る大規模なシミュレーションを達成し、その結果、従来生じていなか ったスターバーストや星団形成を再現して、そのメカニズムを明らかにしたと いうものです。 この研究には、斎藤研究員が過去数年にわたって開発を進めてきた並列N体 +SPH による銀河形成シミュレーションコード「ASURA」(注1) と本年4月にCfC A に導入された Cray XT4 システム (注2) が使われました。ASURA はこのほ かにも、国立天文台の「天の川創成プロジェクト」の基盤ソフトウエアとし て重要な成果をいくつも挙げています。 また、ポスターで使われたコンピュータグラフィクスは、同CfCAの4次元デ ジタル宇宙 (4D2U) プロジェクトの武田隆顕 (たけだたかあき) 研究員が作成 したものです。 2日間のシンポジウム期間中に審査員投票と一般投票が行われ、書類選考を 経て参加したポスターセッションにおける31人の発表者の中から、斎藤研究員 が最優秀賞を受賞したものです。これは、大規模シミュレーションコードの性 能とサイエンスの両方において、極めて高い評価がなされたためです。 斎藤研究員は本年11月に米国テキサス州オースチンで開催される SC2008 ( 注3) へ、理研のレポーターとして派遣されます。 注1 並列 N体+SPH による銀河形成シミュレーションコード「ASURA」 暗黒物質や恒星成分を質点 (N体粒子と呼ばれる) として置き換え重力相互作 用を計算し、ガス成分の流体相互作用を広がりをもった粒子の相 互作用とし て表す Smoothed Particle Hydrodynamics (SPH) 法を用いて計算する手法。 ガス系の重力相互作用は、やはり質点として計算する。 斎藤研究員が独自開 発した「ASURA」は、この手法に基づいたシミュレーションを並列計算機上で 実行可能。 注2 Cray XT4 システム 米国企業 Cray 社が開発したスーパーコンピュータ。国立天文台 天文シミュ レーションプロジェクトでは、2008年4月に導入した。 注3 SC2008 スーパーコンピューティングに関する世界最大の国際会議。今回は米国テキサ ス州オースチンにおいて11月15-21日に開催される。今年で20回目を迎える。 参照: 次世代スーパーコンピューティング・シンポジウム2008 (理化学研究所) http://www.nsc.riken.jp/symposium2008-report.html 国立天文台 天文シミュレーションプロジェクト http://www.cfca.nao.ac.jp/ 2008年10月15日 国立天文台・広報室