アストロ・トピックス

No.390: 石塚氏ペルー渡航50周年を記念する国際ワークショップの開催およびペルー電波望遠鏡観測局の開所式

 半世紀前に南米ペルーへ渡り、今もペルーの天文学普及に情熱を傾けている
日本人天文学者・石塚睦 (いしつかむつみ) さんのペルー渡航50周年を記念す
る国際ワークショップが、6月28日から7月8日まで、ペルーの首都リマにある
ペルー地球物理観測所 (IGP) や、ワンカイヨ、イカなど、関連施設がある都
市を移動しながら開催されます。
 石塚さんは、京都大学大学院在学中の1957年、恩師の命を受け太陽コロナ観
測所を建設するためペルーに渡りました。資金難のため建設は難航し、アンデ
スの高地に観測所を完成させたのは1979年、さらに観測を開始できたのはその
9年後でした。
 ところが観測開始からわずか3カ月後、観測所は反政府テロ組織により武力
占拠されてしまいました。夜間戦闘に転用できる赤外線観測装置を差し出し協
力するよう要求されましたが、石塚さんが拒否したため、観測所は爆破され全
壊してしまいました。さらに、石塚さんはテロ組織から命を狙われ潜伏生活を
余儀なくされましたが、それでも「ペルーに天文学を根付かせたい」と、ペル
ーに留まることを選びました。
 現在、石塚さんはIGPで教育天文台建設をはじめとする天文学教育に情熱を
注いでいます。
 1995年には、次男のホセ・イシツカさんが電波天文学を学ぶために来日し、
東京大学で博士号を取得したのち、国立天文台VERAプロジェクトへの参加を経
て、2005年にペルーに帰国しました。
 ホセさんは、既に役割を終えたペルー民間電話会社の衛星通信用アンテナを
無償で譲り受けて改造し、電波望遠鏡として活用する計画を推進しています。
しかし、ペルーの厳しい財政状況のため予算はなく、施設の運用費用を募金に
頼る状況です。
 長年の苦労を知る日本の研究者たちも、石塚さん親子の活動を支援していま
す。国立天文台では、IGPと互いに研究協力をする協定を締結し、電波望遠鏡
への改造に必要な受信機などを支援しています。
 こうした努力のひとつがようやく実り、ペルー初の電波望遠鏡がいよいよ実
現する運びとなります。間もなくペルー民間電話会社からIGPへのアンテナ譲
渡が完了し、電波望遠鏡への改造が開始されます。ワークショップ会期中の7
月3日(石塚睦さんがペルーへ渡って51年目の記念日) には、このアンテナのあ
るワンカイヨで開所式が行われます。
 遠い異国に天文学を根付かせるため、親子二代にわたって情熱を注ぐ日本人
天文学者の活動をぜひ皆様にも知っていただき、引き続き多くの方々のご支援
をお願いいたします。
 ※この情報は、「ペルーの電波望遠鏡を支援する会」代表の井上允さん(国
立天文台) よりご提供いただきました。
 
参照:
 International Workshop on NEW ASTRONOMICAL FACILITIES IN PERU In 
honor to Mutsumi Ishitsuka (英語)
  http://www.ws2008-mi.com/
 南米ペルー電波望遠鏡建設計画への協力のお願い
  国立天文台 アストロ・トピックス (50)
  http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000050.html
 ペルーの電波望遠鏡を支援する会 (代表:国立天文台 井上允)
  http://www.peru32m-telescope.net/
 ペルーへ天体望遠鏡を贈る会 (代表:西はりま天文台公園長 黒田武彦)
  http://www.nhao.go.jp/nhao/misc/special.html
 
      2008年6月20日            国立天文台・広報室