アストロ・トピックス
No.356: 金田さん、多胡さんがこぎつね座に新星を発見
北海道札幌市の金田宏 (かねだひろし) さんは、12月25日 (世界時、以下同 じ) の観測から、こぎつね座に8.7等の新星を発見しました。この新星は、デ ジタルカメラ (焦点距離105ミリメートル、f/2.5 レンズ使用) により撮影さ れた3枚の画像の中から発見されました。この発見は、中野主一 (なかのしゅ いち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告されました。 DSS (注) を用いて、半径20秒角以内の範囲で調べた結果、この天体はあり ませんでした。また、金田さんは同じ場所を10月に3夜、11月に4夜、今月も2 夜 (限界等級はいずれも10ないし11等) 観測していますが、いずれもこの天体 は写っていませんでした。 岡山県津山市の多胡昭彦 (たごあきひこ) さんも、12月26日にデジタルカメ ラ (焦点距離105ミリメートル、f/3.2 レンズ使用) で撮影した2枚の画像に 8.3等で写っているこの天体を独立発見しています。 なお、金田さんが発見時に撮影したほかの画像には、この天体が8.2等に 写っているものもありましたが、薄雲を通して観測していたために本当の明る さは定かではありません。 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、12月26日に撮影した 画像にこの天体が7.1等で写っているのを確認しているほか、天体の位置も確 認しています。 この天体の発見日時、位置 (板垣さんによる観測値) は次の通り。 発見日時 2007年12月25.35日 = 12月25日8時24分 (世界時) 赤経 19時 48分 08.84秒 赤緯 +21度 15分 27.6秒 (2000年分点) この新星は、12月26日に、美星天文台 (岡山県井原市)、県立ぐんま天文台( 群馬県高山村)、兵庫県立西はりま天文台公園 (兵庫県佐用町)、それに岡山県 倉敷市の藤井貢 (ふじいみつぐ) さんによって分光観測が行われており、その 結果、スペクトル線に現れる吸収線の特徴から、明るさが極大時に達する前の 古典的新星ではないかと考えられます。 新星や超新星の発見の多くは明るさが極大に達した後のため、今回のように 極大前に発見された新星の場合は、観測から貴重な情報が得られます。引き続 き、追跡観測が強く望まれます。 この新星は、「こぎつね座 V459」と命名されました。 注:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュ エル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オース トラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化 したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天 体まで写っている。 参照: CBET No. 1181 : V459 VULPECULAE = NOVA VULPECULAE 2007 No. 2(2007 Dec 26) 2007年12月28日 国立天文台・広報室