アストロ・トピックス
No.347: 相次ぐ日本人による新星の発見
11月に入り、日本人による新星および新星らしき天体の発見が相次いで報じ られました。このうち2件は M31 (アンドロメダ銀河) の中にある天体でし た。 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんが、11月13日 (世界時、 以下同じ) の観測から、17.1等の新星を発見しました。この新星は、アンド ロ メダ銀河としておなじみの渦巻き銀河 M31 の中にあり、板垣さんご自身が 所有 する口径60センチメートルの反射式望遠鏡を用いたCCDによる観測から発 見され ました。この発見は中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天 文学連合 に報告され、M31N 2007-11c と命名されました。なおこの新星は、 V. Burwitz さんらのグループと、K. Hornochさんによっても独立に発見され ています。以 下は板垣さんによる新星の観測値です。 名称 M31N 2007-11c 発見日時 2007年11月13.442日 = 11月13日10時36分 (世界時) 赤経 0時 43分 04.13秒 赤緯 +41度 15分 54.1秒 (2000年分点) 等級 17.1等 (11月13.442日) また、福岡県久留米市の西山浩一 (にしやまこういち) さんと、佐賀県みや き町の椛島冨士夫 (かばしまふじお) さんは、11月17日の観測から、M31 に別 の新星らしき天体を発見しました。この新星らしき天体は、口径40センチメー トルの反射望遠鏡を用いたCCDによる観測から発見されました。この発見は中 野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合に報告され、 M31N 2007-11d と命名されました。以下はお二人によるこの天体の観測値で す。 名称 M31N 2007-11d 発見日時 2007年11月17.57日 = 11月17日13時41分 (世界時) 赤経 0時 44分 54.60秒 赤緯 +41度 37分 40.0秒 (2000年分点) 等級 17.7等 (11月16.51日)、14.9等 (11月20.385日) この新星らしき天体 M31N 2007-11d は、約15等級まで明るくなっています が、この明るさはM31銀河の新星としては最大級に明るいものです。 なお、M31 銀河の中の新星の発見は、板垣さんが今年に入って4個目、西山 さんと椛島さんが今年に入って2個目となりました。また西山さんと椛島さん は、今年9月にM33銀河の中にも新星を発見しています。 さらに国際天文学連合回報 (IAUC) No.8898 では、西山さんと椛島さんが、 へび座に新星らしき天体を発見したことが報じられました。しかしこの天体に ついては、アメリカ変光星観測者協会 (AAVSO) のウェブページで、既知の変 光星 ASAS 180924-0722.2 ではないかとの旨が掲載されていることを合わせて ご案内いたします。以下はお二人によるこの天体の観測値です。 赤経 18時 09分 24.25秒 赤緯 -7度 22分 14.2秒 (2000年分点) 等級 12.8等 (10月2.485日)、 11.0等 (11月20.431日) など へび座の新星らしき天体については、残念ながら新星では無い可能性が高ま りましたが、板垣さん、西山さん、椛島さんといった日本のアマチュア観測者 による相次ぐ新星の発見は、賞賛に値します。今後の活躍に期待いたします。 参照: IAUC No.8898 : BRIGHT NOVA IN M31 (2007 Nov 20) IAUC No.8898 : POSSIBLE NOVA IN SERPENS (2007 Nov 20) M31 (Apparent) Novae Page : CBAT (英語) http://www.cfa.harvard.edu/iau/CBAT_M31.html VSOLJ ニュース (183) : 日本変光星観測者連盟 アンドロメダ座大銀河M31に明るい新星が出現 (2007年11月21日) AAVSO Special Notice #83 : アメリカ変光星観測者協会 (英語) Possible Nova in Ser (2007 Nov 20) http://www.aavso.org/publications/specialnotice/83.shtml 国立天文台 アストロ・トピックス (333) 椛島さんと西山さん、M33銀河に新星らしき天体を発見 http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000333.html 2007年11月28日 国立天文台・広報室