アストロ・トピックス
No.342: 肉眼光度にまで大増光したホームズ彗星
ホームズ彗星 (17P/Holmes) が急激に増光し、日本時間の10月25日未明に約 3等の明るさに達し、夜空に肉眼でも確認できるほどになっています。このよ うな急増光は、アウトバーストと呼ばれ、彗星ではときどき観測される現象で すが、今回のように2日足らずの間に約14等も明るくなって、肉眼で見えるほ どに達する大増光は非常に珍しいことです。 ホームズ彗星は今年5月に近日点を通過し、現在は太陽から約2.4天文単位( 約3億6千万キロメートル) の位置にあり、太陽から遠ざかっているところで す。10月23日 (世界時、以下同じ) には、約17等で観測されていました。 しかし24.067日には、8.4等と、なんと約9等もの増光が捉えられました。そ の後も増光は続き、日本で夜を迎えた24.55日には、国内で約3.5等で観測さ れ、さらに、24.8日頃 (日本時間の25日明け方) には、約2等台の明るさに達 し、肉眼でも容易に確認できたと報告されています。 アウトバーストとは、彗星核から一時的に大量の塵やガスが吹き出す現象で す。その初期段階では、大量に放出された物質が太陽光を反射し、明るく輝き ます。24日頃のホームズ彗星は、まさにこの段階と考えられます。放出された 物質がそれほど拡散していないため、まだ尾のような構造は見られていませ ん。そのため、肉眼では恒星状で、望遠鏡で拡大するとわずかに面積を持った 丸く明るい頭部 (彗星のコマと呼ばれる) が確認できます。肉眼で見ると、星 座を形作る星が一つ増えたように思えるほどです。 周期彗星で、これだけの大きな増光を起こし、肉眼でも見えた例としては、 1973年に観測されたタットル・ジャコビニ・クレサーク彗星 (41P/Tuttle-Giacobini-Kresak) があげられます。この彗星は、約10等のアウ トバーストを起こし、約4等台の明るさで見えたといわれていますが、今回の ホームズ彗星は、これ以来の希有な現象といえるでしょう。 実は、このホームズの彗星自身も、発見時の1892年に今回のような大増光を 起こしていました。当時は約4等で観測され、通常時よりも12等ほど明るくな ったのでは、と推測されています。この彗星にとっては、実に115年ぶりのア ウトバーストといえるかもしれません。このときは、翌週にはすぐに3等以上 も暗くなってしまったことが記録されています。 すでに今回の増光は鈍ったとの情報もあり、今後は、アウトバーストによっ て放出された塵が次第に拡散していくため、ゆっくりと減光していくと予想さ れますが、いったいどのような変化を見せるのか、世界中の注目が、この彗星 に集まっています。 彗星はペルセウス座にあり、一晩中観測できる非常に観測しやすい位置にあ ります。ぜひ一度、ご覧になってみてはいかがでしょうか。 参照: IAUC No. 8886 : COMET 17P/HOLMES (2007 Oct 24) ホームズ彗星 (17P/Holmes) の大増光 (国立天文台) http://www.nao.ac.jp/new-info/17P.html 2007年10月25日 国立天文台・広報室